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ピアノから出る雑音〜蝶番編〜

 

「弾いてる時に何か変な音が混ざって聴こえる」

「日によって変な音が出たり出なかったりする」

 

このような言葉をメンテナンスの現場でよく耳にします。

 

これは「共鳴振動」といって、同じ固有振動数を持つもの同士が干渉し合う現象ですが、

例えば、

・長さの同じ振り子の一つを揺らすと、もう一つも揺れだす。
・グラスをスプーンで軽く叩くと、触れていない同じ大きさのグラスも震える。

これが共鳴振動です。

実はピアノも同じ現象がよく起きて、音を鳴らした時に同じ周波数の物が同時に震えだして共鳴することがあります。

 

 

アコースティックピアノを弾かれる方は見たことあるかと思いますが、ピアノには蝶番がたくさん使われています。
これはグランドピアノですが、屋根を開け閉めするためにこのような蝶番がついています。

 

 

 

屋根の左側にもついています。

 

 

譜面板にもよく見ると蝶番がついています。

 

この蝶番が鍵盤を弾いた時に共鳴して、金具が震えて雑音が出るのです。

ではこの共鳴振動をなくす方法は?

 

結論から言いますと ・ ・ ・

 

残念ながら、完全に共鳴しないようにすることは不可能です。

 

 

では諦めろと?

いえ、出る確率を減らす方法はあります。

 

それは出来る限りネジを固く締めて隙間をなくし震えないようにするというもので、

これは私のやり方ですが、まずはどこに共鳴しているか音の出所を特定して、その部分のネジというネジをとにかく増し締めします。
ネジがバカになっているところは埋め木をするか長めのネジを入れ替えるかして、できるだけ固くなるように締めます。

 

 

 

ネジが緩んでいると隙間ができて、金具やプラスチック等が震えて接触面から雑音がでるのです。

このネジの増し締めでも共鳴が治まらない場合は、蝶番の中に入っている芯棒(軸)を金槌で叩いて少しずらします。それでも治まらない場合は、芯棒を少し抜いて数か所プライヤーで曲げて入れ直します。これで回転運動が少し妨げられ硬くなるので共鳴が出にくくなります。

 

 

  

鍵穴からもよくビビリ音がするので、可能な限り分解してネジの緩みをチェックします。

 

ここまでしても、また共鳴振動が起こることがあります。なぜでしょう?

 

それは湿度です。

 

このネジたちはほとんどが木材に取り付けられています。
その木材は多湿だと膨らみますし、逆に乾燥すると痩せてきてネジが緩んできます。

ですので、日によって共鳴現象が出たり出なかったりするのは、その日の天候や空調によって湿度が変わるためなのです。

 

この共鳴振動現象は新品、中古関係なくほぼ全てのピアノはこの蝶番を使用しているので、必然的に

ピアノは共鳴振動が起きる楽器なのです。

 

しかし出来る限り共鳴する確率を減らしたいのであれば、対策として定期メンテナンス時にネジの増し締めをしてもらい(その際に、どこの音を弾いた時に雑音が出たか予めメモをしておいて技術者にお伝えしてみてください)、また普段から空調管理をするなど心がけてみてください。

 

今回は雑音の原因として蝶番をピックアップしましたが、実はピアノ内部の雑音はこの蝶番だけではないのですが、それはまたの機会にご紹介したいと思います。


>>>ピアノの空調管理について

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


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