[ ]ヨーロッパ製ピアノは日本の気候に適していない?
西洋楽器のピアノは日本の夏のように湿度が高い国での使用は不向きなので「国産ピアノの方が安心ですよ」というセールストークがあります。
ペトロフ社5代目社長スザンヌ・ペトロフさん 弊社2Fにて筆者撮影
しかし国産のピアノでも木材は全て輸入材ですし、輸入、国産を問わず高級なピアノほど自然素材(無垢材等)を多く使うので温度や湿度といった環境の変化には敏感です。
余談ですが高級なピアノは、使用木材も屋外で数年の自然乾燥を経て使われますが、量産ピアノは、工場内で短時間で人工乾燥した木材(響板等)が使われるので、木材の細胞を痛めて楽器の命である響板の寿命も縮めることになります。
屋外で自然乾燥された木材 ペトロフの工場にて 筆者撮影
また最近はアクション内部のムービングパーツに、従来の木の替わりに、木より軽く鉄より堅いカーボンファイバー(炭素繊維)を使ったものがありますが、これは軽くて歪みがなく均一な形状で合理的ですが、堅過ぎて木のように適度なたわみがないのでタッチに違和感が生じます。
軽くて強く歪みのないカーボンを使ったシゲル・カワイのアクション
昔ながらの木材を使ったスタインウェイのアクション
しかもアクション内部のセンターピン(写真で赤く見えているところで関節部分)はカーボン(木)とフェルトが一体化したデリケートな部分なので、ここがひとたび湿気ると、湿気を吸わないカーボンはクロスだけに湿気が集中し、一旦湿気ると木に比べ自然復元力が極端に劣ります。
木の中に赤く見えるところがフェルトで、云わばアクションの関節部分になります
一般的な量産ピアノは工業化に適した伸縮や歪みが少ない積層材等や人工素材を多用して大量生産されるので、均一で安定した品質という意味では良いのですが、天然素材が多い高級ピアノに比べると、音色や響きと云った楽器としての魅力は乏しくなります。
国産アッライトピアノの鍵盤蓋
ヨーロッパ製アップライト(ペトロフ)の鍵盤蓋
国産ピアノであれ輸入ピアノあれ、また安価、高級を問わずピアノの内部の複雑なメカニズムには木材(カーボン)だけでなく、たくさんのフェルト(弦を叩くハンマーも)類が使われていますので、ピアノは一般に考えられているよりはるかに厄介な楽器です。
できれば加湿器と除湿機で温度と湿度の適正な管理が望ましく、その方が圧倒的に狂いが少ないのでメンテナンス費用も安くあがります。
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