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アドバイスとセールストークを分けて考えましょう

みんなのピアノ選びから抜粋


同じスタインウェイでも音色は一台一台違い、同じ音色のものはないといっても過言ではない。よく日本のピアノ店へ行って選ぼうとすると、店員さんが、「わが社のピアノは全部同じ音で、お選びになる必要はありません」などというが、あれはウソである。
・・・(中略)・・・

同じ30万円のピアノでも、40万円の値打のものもあれば、20万円でも高いと思われる音のものに出会うこともある。どんな安物ピアノを買う時でも、よくわかる人に選んでもらわなければ損だ!・・・
高城 重躬『スタインウェイ物語―ピアノのメカニズムと演奏技法』(ラジオ技術社)

如何でしたでしょうか。
そのスペックに明らかな欠陥や手抜きがない限り、ピアノが音楽的に機能しているならば、後はお客様のお好みで選べば宜しいのではないかと私は考えています。

昔はピアノの情報を得る手段が少なく、予備知識のない方ばかりだったため、「あのピアノはアクションにプラスチックを使っているから問題あります」「合板が使われているピアノは音の響きが良くないですよ」「外国製は狂いやすいから日本製のピアノにした方が間違いありません」

店員によるネガティブキャンペーンのような売り文句がまことしやかに通用していました。どれも確固たる根拠のないものばかりなのですが…。

気の毒なのは、こうした話に惑わされて、結果的に粗悪なピアノを購入してしまったお客様です。

ハンマーフェルトだけドイツ製品を採用、 ブランド名をドイツ語で冠しただけの東南アジア製ピアノなのに、我が家のピアノはドイツ製と信じて疑っていないユーザーを今までに何度もお見かけしてきました。

よほどセールストークでスペックばかり強調されたのか、もはや洗脳商法に近いものを感じます。ただ、当時と違って、現在はパソコンや携帯電話が普及した高度な情報化社会です。

インターネットで検索すれば、仕様の違いのみならず音の違いまで聴覚的に比較することも可能ですし、そのメーカーについての他のユーザーの感想や調律師の意見を求めることも出来ます。

となれば、スペックを主とした説明では、すでに情報収集したお客様には満足して貰えないのでは??と私は思うのですが、いまだ多くの店で相変わらず前時代的なセールスが展開されています。

これでは販売低迷も致し方なし、本当にピアノが好きな方の支持を得られる訳がありません。

そんなマンネリズムに陥っている販売の現場が変わるために、勿論あなたが有益な情報を得るためにも、ひとつ私から提案があります。

ピアノを見るために店を訪れたとき、まずはどのような音やタッチが好きなのか店員に伝えましょう。

「○○○(楽曲、ピアニスト、作曲家など)が好きなんですけど、どのピアノがあなたのオススメですか?」

「このピアノの音色に良く合いそうな楽曲がありましたら教えて下さい」等と、ご自身の音楽的な好みを話してみるのも面白いと思います。どんな反応が店員から返ってくるでしょうか。

音楽を知る者であれば、スペック以外の切り口からも“そのピアノの良さ”を説明してくれるはずです。

あなたの嗜好に合わせて、または楽器の特色を活かして、気になるピアノでパラパラと弾いてくれたら、ただ言葉だけで設計や材質のウンチク話を聞かされるよりも、よほど説得力がありませんか?

こんなことを言うと、お客に先入観を与えるから良くない!と異議を唱える人がいるかもしれませんが、個人的な意見を自重して控えるのと、質問されて答えられないのとでは大きな違いです。

「この料理に合うワインを」と尋ねられて答えに困るソムリエを、はたしてお客様は信頼するでしょうか。

強く惹かれるピアノが定まりましたら、調整をおこなった調律師にも解説をお願いしましょう。
自分好みの音やタッチに近づけて貰えるか、遠慮なく相談してみては如何でしょうか。

弊社店頭で調律師(三木)の立会いでご試弾中のお客様
 
浜松のカワイ竜洋工場で、ディアパソンをご家族で選定中のお客様


調整した本人にしか分からないこともありますし、ピアノ内部の状態、作業内容、その楽器の個性など、カタログやネットには書かれていない裏情報を教えてくれると有難いですね。

納品後の付き合いまで考えると、むしろ技術的な責任を負う調律師の方が本音を語ってくれるかも…。
     
私の考えるピアノ選びの基本ポイント常にお客様の側から好奇心をもってアプローチすること。営業マンや調律師に対して、気兼ねしたり、受身にまわる必要は全くありません。

音楽的(楽曲、半音階などを弾くことで、音とタッチを確かめる)
品質的(内部のアクション、響板などを覗いて、ピアノの構造や調整状態を確かめる)に自分に相応しいピアノをじっくり品定めすることは、間違いのないピアノ選びの必須条件です。

それは、とりもなおさずピアノには個体差があるから、アタリとハズレが存在するから。 

 何十万円、何百万円と支払う金額を考えれば、ためらうことなく 店のスタッフには質問を重ねるべきです。

本来アコースティック楽器に個体差は付き物。購入前に吟味するのはヴァイオリン等では当然の行為です。

どうもピアノは工業製品のイメージが強いのか、そうした認識が希薄な方が多いようです。実物を見も聴きも触りもしないでネットで注文する等、あまりにもリスキーな買い物と言わざるを得ません。

見る眼、聴く耳の肥えた消費者が増えてくれば、必然的に販売側もサービス改善に迫られることでしょう。

とくに高級ピアノを販売する人間は、単なる知識の受け売りや安易な値下げ話を持ち出すのではなく、楽器に対する愛情と深い見識のもと、“そのピアノ”の個性と価値を的確に伝えるスキルが必要となります。

これからのピアノ選びは質と個性の時代。
それにはプロのアドバイザーが接客現場に欠かせません。
マニュアルではなく顧客目線で、自分の言葉でピアノの魅力を語れる人材の育成は業界の急務ですね。

☆POINT
ピアノ選びで最後に明暗を分けるのは、 メーカー選びでも、店選びでもなく、むしろ店員選び!?音楽性と品質を満たすピアノを責任もって選別してくれるスタッフを見つけましょう。 

みんなのピアノ選び
 
 当店でピアノを選ぶメリット
 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


調律師の技術はお客様に奉仕するための手段

みんなのピアノ選びから抜粋

調律師の技術はお客様に奉仕するための手段

「これまでの科学技術者は、とかく視野を自分の研究対象あるいは仕事にだけ向けて、人間を理解するための観察や追求には目を向けようとしなかった。私はこれではいけないと思う。」
本田宗一郎『やりたいことをやれ』(PHP研究所)



人の役に立たない、喜んで貰えないような技術など意味を成さない!
本田技研工業(ホンダ)を創業した本田宗一郎氏は、技術者ならではの確固たる思想哲学から、周囲に常々そう語っていたそうです。

これを我々の仕事に置き換えてみると、調律や調整を通じて、いかにお客様にピアノを楽しんでもらえるか。ピアノ技術者たる調律師の本分をズバリ言い当てている気がします。

よく調律師は“ピアノを直すドクター”と例えられることがあります。
医療現場で「病を見て患者を見ず」といった言葉が存在するように、
ともすれば我々調律師も、仕事の関心がピアノだけに偏りがち。
視野を広げて依頼者の気持ちに配慮できるよう心がけたいですね。

~もっと弾きやすいピアノにして欲しい~
~10年後も使用できるピアノにして欲しい~
~調律ついでに何か1曲弾いて欲しい~

これらは実際にお客様から頂戴した様々なリクエストです。
ユーザーは調律師に対して何を望んでいるのだろうか
想像力を働かせて仕事に臨むことの大切さを考えさせられます。

これからの調律師はただピアノに向き合って作業するのみではなく、ピアノの魅力を相手に伝える努力や顧客の満足度を高めるための創意工夫も求められます。

いくら良い仕事をしても、その価値を理解してくれる人が増えなければ調律師もピアノメーカーも生き残ることは難しい気がします。

みんなのピアノ選び

当店でピアノを選ぶメリット

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


ピアノの評価=楽器の個性+調律師の技術

みんなのピアノ選びから抜粋

楽器の個性+調律師の技術

ことコーヒーに関して、まだまだ素人な私ですが、ピアノメンテナンスに伺うお客様の中には相当な“コーヒー通”もいらっしゃっいます。

「あそこのブラジルは美味しいからぜひ飲んでみて下さい」とか
「マンデリンをあちこちで取り寄せたけど、ここが一番好き!」
と豆の銘柄(産地)を決めて自家焙煎の店を飲み比べる方も…。

豆の銘柄のみならず、焙煎、挽き方、注ぐお湯の温度、抽出方法、そうした幾つもの要素が絡み合って決定されるコーヒーの味。

美味しいコーヒーを淹れるためのグッズの数々。“違いが分かる男”になれるでしょうか。


ピアノも同様、弦を叩くハンマーフェルトの硬さ鍵盤の沈む深さアフタータッチの量など、調律師が施す調整作業の組み合わせ次第で、音とタッチに新たなキャラクターが宿る奥深い楽器なのです。

「調整でピアノの性格がこんなに変わるとは知らなかった!」
「あそこで弾いたときはタッチ重かったけど、この店のは弾きやすい」
とは複数の店で同じメーカー、同じモデルを弾いたお客様のご感想。
第一印象がイマイチだったピアノが調整で一変することも“無きにしもあらず”。たった一台のピアノで判断を下すのはあまりに早計です。

ピアノを調整する工具の一部をご紹介。すべてはユーザー好みの音とタッチのために。


他の店で他の調律師が調整したピアノを試弾するのも、お気に入りのピアノに到達するためのテクニックのひとつです。ぜひ好奇心をもって調整に熱心に取り組む各地のピアノ店を巡ってみましょう!

みんなのピアノ選び

ピアノの調律とメンテナンス

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


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