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ピアノの定期メンテナンスのあり方

ピアノの定期メンテナンスは、整調・調律・整音の3点セットです。
ファツィオリピアノ F183

弦楽器はチューニング(調律)が必要なことはみなさんご存知だと思います。
ピアノも弦楽器ですが、それだけではなく、鍵盤を押すとアクションが動きハンマーで弦を叩く、いわば打楽器でもあります。...

この打楽器であるアクションメカニックを一つずつ精密に調整することを整調(せいちょう)といいます。

そして弦を叩くハンマーフェルトの弾力、つまり音色の硬さを隣同士88鍵揃えていく調整を整音(せいおん)といいます。

実はこの整調と整音こそがピアノの本来のポテンシャル(性能)を引き出してくれるのです。
 









例えばコンサートホールは年に1度丸2日間かけてメンテナンス(保守点検)を行ないます。1時間調律をして残りの15時間は整調と整音にあてます。それだけ整調と整音はピアノにとって重要なのです。

それでも一般家庭のピアノはなかなか丸2日間はかけれないと思いますので、少なくとも半日以上かけて整調・調律・整音の3点セットを行なっていくと、どのようなピアノでも見違えること性能アップしてきますので、くれぐれも調律だけの手抜き(格安)メンテナンスにはお気をつけください。


 
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株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


調律師の現状

一般に調律師の仕事は調律(調弦して音程を合わせる)と理解されていますが、調律は1時間少々の作業時間に対して、調整(整調)は半日単位の作業時間が必要です。

良く調整されたピアノでも写真のような定期的なメンテナンスが必要です。
このような作業(調整)は調律をする前にやる必要がありますが、出荷調整だけでなく定期メンテナンス(調律)時にもやらないと快適な演奏は出来なくなります。


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調律師の仕事というのは、お客様宅で1時間余りの調律で2万円程のお金を稼ぐスマートな仕事と理解され高い授業料(2年間で300万円前後)を払い専門学校に行く人が多いのですが、調律師としての本来の技術を身につけるには、専門学校を卒業後最低でも5~6年の修業期間が必要です。

しかし若い人はこの下積みの修業が苦手な上に、現実には調律よりもこのような細かい作業時間の方がはるかに長いので、当初の調律師の仕事内容とイメージが違うので若い人が育ちません。

ただ一旦、整調や整音の高度な技術を身につけると、たとえ将来、もっとピアノ業界が低迷しても、違いが分かるピアノ愛好家の方からは確実に支持されますので将来も仕事に困ることはないと思います。

ピアノの調律とメンテナンス


 
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株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


弊社の中古ピアノの手間のかけ方Vol.5

弊社の中古ピアノが商品になるまでvol.5  

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弦が駒から浮いていないか真鍮棒で軽く叩いてしっかり密着させます。
これにより弦の1本うなりが解消されます。(通常弦は1本だけではうなりは発生しません)

 


これから調律です。

まずは49番目のA(ラ)の音を442Hzに合わせてから調律します。
チューナーで測ってみると

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436Hz。

かなり下がっているので、一度下律(粗調律)をします。
1~2Hz程度でしたらそんなに弦を緩めたり引っ張ったりしなくて済むので、
1回の調律で合わせることができますが、6Hzを急に上げる(引っ張る)と
短時間でまた下がって(戻って)くるので下律といって近いところまで全体の弦を引っ張ります。
下律の時間は20~30分程です。

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49Aを445Hzでとり下律をします。


ざっくり下律が終わりimg_7029img_7030

 

最初の49A(ラ)を測ってみると・・・img_7031


予想通り441.8Hzまで下がっていました。
ここから442Hzで改めてとりなおし本調律(調律)です。
 
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調律が終わると次はハンマーの弾力を調整する整音です。

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まずは弦とハンマーの噛み合わせの調整をします。
歯の噛み合わせをイメージしていただくと分かりやすいと思います。
2本(低音部)または3本(中音~高音部)の弦が、同時にハンマーに当たるように削ってレベル(高さ)を合わせるため、一度ハンマーに色をつけます。

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カーボン紙を弦につけ、それをハンマーに移します。
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このように色がついて見やすくなりました。
ちゃんとハンマーのど真ん中に当たっているか再確認もできます。

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ハンマーを弦にあてた状態で弦を1本ずつはじいて音の長さを聴きます。
当然先に早くあたっていると音の長さが短いので、ハンマーのその部分(3本あれば左or真ん中or右)を板ヤスリで削ります。

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写真ではわかりづらいので動画でどうぞ。

image弦あたり調整動画


弦あたり調整が終わり一度全鍵を強く弾いて耳につく音があればチェックします。

img_7120img_7121

 

気になるところをチョークで印をつけていきます。

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耳につくような硬い音がたくさんあったのでハンマーに少しずつ針をさして再度確認。
深くさしたり先端付近を軽くさしたりと、針を入れる場所や深さによって音が随分変わりますので隣同士の音色(音質)と同じようになるように慎重に行ないます。

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これで鍵盤・アクション・弦の調整が終わったので、一度テストで弾いてみます。

すると・・

ペダルを踏み、上げた時にきしむような音が出ていました。

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下パネルを外して見てみるとやはり・・・

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この黒いクロスが当たっているところは


ここです。クロスが圧縮されて硬くなっていたので貼り替え。

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これが当たっているところは

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このダボ穴です。

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オスの方にテフロンパウダーを擦り込ませました。
パネルをして再度弾いてみると、先ほどのきしみは消えました。

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次は真ん中のペダルの弱音マフラーの貼り替えです。
よく形がついていますね。
このピアノの元の所有者は、ハンマーの消耗具合とマフラーの消耗具合から見て、弱音ペダルをしたまま弾くことの方が多かったように思います。

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剥がして裁断して貼り替えます。
上から低音、中音、次高音、高音と厚みが違います。
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貼り替え後弱音ペダルの効き具合を調整します。

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鍵盤押えを固定して

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鍵盤蓋を乗せて

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上前板を着けたら、ようやく形になっていました。

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ちなみにこの上前パネルはトーンエスケープ仕様になってます。

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通常のアップライトピアノは上前パネル(板)がフラットになっているため屋根の蓋をしめると後ろからしか音が抜けませんので、屋根をあけない限り音が中でこもってしまいます。
トーンエスケープは上前パネル(板)に隙間があるので、
後ろからだけでなく前からも音が抜けるので少しだけこもった音が解消されます。

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内側から見ると構造がよくわかります。

 

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再度雑音チェックも終わり作業が完了しましたので、音色の確認で田中先生に試弾していただきました。

ヤマハ中古ピアノ YUX 1982年製
ショパン/ワルツ集 嬰ハ短調 作品54-2   演奏者 田中節夫    3分41秒


いかがでしたでしょうか。
 
長くなりましたが、弊社の中古ピアノが入荷して商品になるまでの一連の作業をご紹介しました。
相対的に安価な中古ピアノですが、本来の性能を発揮させるためには、新品以上に面倒な修復や調整作業が必要だということがご理解いただけたかと思います。

ピアノの調整作業というものは、新品であれ中古品であれ省こうとすればほとんど省けます。
省かずに一つ一つの作業を順番に丁寧にやると、いかなるピアノであれ確実に性能(タッチや音色、響き)の良いピアノになります。
 
安価に販売しているピアノのカラクリをご理解いただけた上で、より多くの方に後悔しないピアノ選びをしていただきたいと心から願っています。

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