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音大出身で絶対音感がある自分は調律師に向いているか?

というご質問を頂きました。
答えは「音大出身は良いのですが、調律師と絶対音感は全く関係ありません」ということ、相対音感があれば困ることはありません。   

調律師の仕事は、音を出して音階を整える作業をイメージされるので、それが絶対音感云々という話になったのかと思いますが、音を出す作業は全体の一部であり、本来の調律師の大半の作業は音が出ない地味な作業になります、そのあたりが調律師の仕事を誤解されているようです。
   
本来の広義の調律とは、整調・調律・整音がセットになった作業ですが、調律や整音にかかる時間は整調に比べれば僅かなものです。



つまり音を出す調律は1時間少々で完了し、これを文字通り調律と呼んでいますが、ピアノ本来の性能を引き出すためには、調律をやる前に先ずは鍵盤、アクション、ダンパーの丁寧な整調作業が必要であり、それが完了してから調律を施し、最後の仕上げが音色の粒を揃える整音になります。

ただメカニズムの整調には新品でも2日~3日の作業時間が必要でコストアップになりますし、お客様も整調のビフォアー、アフターでの比較試弾のチャンスがないので違いがわからない方も多いので、現在は一部の1千万円クラスのピアノ以外は手間がかかる整調は省かれています。

例外としてはシゲル・カワイがあります。
このシゲル・カワイは例外的にメーカーで丁寧に整調・調律・整音をやっているので、従来のカワイと違うという高評価を得ていますが、その要因は丁寧な調整です。

逆に云えばシゲル・カワイでなく安価な普通のカワイでも、販売店(たとえば弊社)で丁寧な調整をしてやるとシゲル・カワイとほぼ同等の性能を発揮するとも云えます、それほど整調というものはピアノの性能にとって大切なものです。

いかなる高級ピアノであれ、丁寧な整調なしでは十分な性能を発揮しないので整調はなくてはならない作業ですが、地味で単純な作業が続く長時間の仕事ですので、絶対音感云々で自分は耳が良いからという軽い気持ちで調律師になろうとした人は大概はここで挫折します。

  





  
なので調律師に絶体音感か相対音感かはさほど問題ではなく、それよりも大切なことは、写真のような細かい作業が好きかどうか(精密にできるかどうか?)の方が、ピアノの性能向上には遥かに大切ということになります。

ところで弊社の定期のメンテナンスも、調律に1時間少々、残りの2~3時間は整調作業に当てる半日作業になります。
 
ピアノの調律とメンテナンス

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株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


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