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中古ピアノが商品になるまでVol.4(弊社の場合)

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弊社の中古ピアノが商品になるまで vol.4

白鍵の高さの次は黒鍵の間隔を揃え高さも揃えます。








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アクションのジャックという部品とそれが当たる部分(バットスキン)の位置を合わせるウイペン調整です。

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アクションの裏のネジを緩めて位置をハンマーの弦合わせ調整と同じように、紙(のり紙)を挟んだりして88個全て調整します。

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バックチェックという部品が奥の黄色い部品(キャッチャー)ときれいに噛み合うようにワイヤーを曲げて88個全て調整します。

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その下のキャプスタンボタンの位置を88鍵全て前後左右調整します。

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このキャプスタンボタンでアクションを持ち上げるのですが、前後させることによってタッチの重さを変更出来ます。手前にやると軽くなり奥にやると重くなるので、好みの重さにすることが出来ます。しかし背の低い機種は、このワイヤーがないのであまり軽くすることが出来ないのが唯一欠点です。

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キャプスタンボタンの位置を隣同士揃えます。
前後の位置は、写真には載せていませんが鍵盤のウエイトを量りながら許容範囲内で基準をとってやってます。手の感覚だけでは正確に測れない部分もあるので、数値を出すことによって細かい前後の位置の微調整が出来ますし低音部から高音部までのバランスがとれます。

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ジャックという部品の高さの調整です。
キャプスタンボタンという部品を回して上下させて上の写真の矢印の間隔を88個全て微調整します。
2度目の音を素早く出すためのこの調整は欠かせません。

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白鍵の深さ(沈む量)を下に挟んである紙パンチングを出し入れして白鍵全てを10mmに揃えます。
隣同士の鍵盤の深さを統一しないと、音量や弾き心地も揃いません。

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接近するハンマーと弦の間の距離を測りながら88個全て同じ距離に揃えます(ハンマー接近調整)
広すぎず狭すぎず隣同士の同じ距離に揃えます。これが揃っていないと繊細なピアニッシモが出にくくなり音の輪郭も揃いません。

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黒鍵の深さの調整です。白鍵と同じように鍵盤下に紙パンチングを出し入れして黒鍵全て揃えます。

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ハンマーが弦を叩いた直後にストップする距離を88個全て揃えます(ハンマーストップ調整)
距離が広いと指にコツコツ感じタッチも重くなり、狭すぎるとフォルテッシモが出せず鍵盤も浅く感じ弾きにくくなります。

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写真が見づらいですが、ジャックという白い部品のストップバーの距離調整です。低音から高音部まで距離を揃えます。

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赤いチップがついているブライドルテープ。前進したハンマーを後ろに戻し素早く2度目の音を出すためのヒモで、この張り具合を88本1つ1つワイヤーを曲げて調整します。

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次はダンパー調整です。

これはペダル内部ですが、よく使う右のダンパーペダルが、部品のサビや汚れで雑音出ることがあるので分解してパーツを磨きます。

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ダンパーは弦の振動を止める役割です。
ペダルを踏むとダンパーが弦から離れ、よって音が伸びっぱなしになります。
ペダルを離すとダンパーが弦に触れ音が止まる、このような構造になっています。

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一見単純なように見えるダンパーですが、実はこのダンパーは1つ1つ上がるタイミングを調整しないといけないのです。

調整する前のダンパーの動きを動画でご覧ください。
ゆっくりペダルを踏むとダンパーがバラバラに上がるのが分かると思います。
ダンパー総上げ調整前(動画10秒)

 

ダンパーがバラバラに上がるということは、
ハーフペダルで音が伸びる所と伸びずに音が切れる所がでるだけでなく、
音を止める時にも支障が出ます。

 

写真では分かりづらいですが、ゆっくりペダルを踏み込み、
1つ1つ上がるタイミングを隣のダンパーを見ながらワイヤーを曲げて調整します。
伝言ゲームのように次に次にと隣に伝えていき、最終的には全てのダンパーが板一枚のように同時に上がるように調整することで、音を同時に伸ばし同時に止めることができるのです。

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調整後はこんな感じです。
ダンパー総上げ調整後(動画)


次はダンパーのかかり調整です。

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ダンパーのかかりとは、鍵盤を10mm押し下げるまでにどの位置でダンパーを始動させるか、
例えば鍵盤を2mm下げたところでダンパーが動き始めるのか5mm下げたところなのか、
これを隣同士同じタイミングで始動(かかる)ように調整します。
早くかかるほどダンパーの重みが加わるので重く感じます。遅くかかると軽く感じますが遅過ぎるとダンパーが弦からしっかり離れなく音が伸びっぱなしにならなくなるので、適正なタイミングで全て揃えます。

 

このような工具でアクションの裏にあるスプーンに引っかけてタイミングを調整します。

作業風景です→ダンパーかかり調整動画

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左のペダルの突き上げ棒の調整です。

矢印の先の棒に隙間(遊び)があるので調整します。


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左のペダルは、グランドピアノとアップライトピアノの違いという記事を後日書きますのでそちらで詳しくご紹介します。

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中古ピアノが商品になるまでVol.5に続く


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株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


中古ピアノが商品になるまでVol.3(弊社の場合)

中古ピアノはきちんと手を入れると新品以上の性能を発揮するピアノになる可能性があります。

その訳はピアノの主材料は木材ですが、鉄やプラスティックと違い木材は年数が経過するほど堅く強固になるという木材の特性上、弦楽器と同様に古いピアノほど基本的には楽器としては優れるからです。

しかし実際には大半の中古ピアノの性能が劣るのは、安く販売するために内部のメカニズムの癖取りや錆び取りをはじめ、何よりも十分な調整が省かれている中古品が大半だからです。
 
手間(コスト)はかかりますが丁寧に調整すると中古ピアノと云えども、魅力的な性能を発揮するピアノに生まれ変ることがご理解いただけます。

弊社の中古ピアノが商品になるまでの作業工程を  vol.1 vol.2  vol.3 vol.4   Vol.5に分けてで詳しく案内しています

中古ピアノが商品になるまで vol.3

鍵盤にはフロント(手前)とバランス(真ん中)に金属のピンがあります。
このピンの位置や方向を揃えていきます。

まずはフロントピンを定規に対して直角になるようピンを回して全て同じ方向に揃えていきます。

 

 

続いてバランスのピンに定規を当てて同じ位置に並ぶようにします。

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下の部分が白鍵で上の部分が黒鍵になります。白鍵のピンが揃いました。

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鍵盤の先端をつまんで左右に振ると1mm程の遊びが出来るようにします。88鍵全てチェックし遊びがない場合は鍵盤を外して調整します。  

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鍵盤の裏側に赤いクロスがありますがこの穴の幅が狭い、つまり遊びがなかったので広げます。

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圧縮する工具で微調整します。やり過ぎる(潰し過ぎる)と反対にガタツキになるので慎重に行ないます。

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次はバランス(真ん中)の穴の調整です。このように鍵盤を少し持ち上げて、

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手を離すと元の位置に鍵盤が戻るか88鍵チェックします。

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このように降りてこない場合は、どこかが窮屈に引っかかっているので調べます。

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1箇所は赤いクロスが先ほどのフロントと同じように狭くなっていたので工具で圧縮して広げます。

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それでも鍵盤が降りてこなかったので今度は鍵盤の木の部分の穴が極端に狭くなっていたのでヤスリで広げ丁度良い具合に調整します。これを88鍵全てチェックし同じスピードで鍵盤が降りるように調整します。

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次は鍵盤の上に乗っているアクションメカニックの調整です。

ハンマーの方向(傾き)が正しいか高音部・中音部・低音部全て調べます。

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左に傾いているハンマーは首の部分(シャンク)に熱を加え右に捻って修正します。

修正後の確認動画です→確認 (ハンマーを一つずつ前進させ動きを見ながら傾いていないか確認します)    

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 ハンマーの傾き(捻じれ)を全て揃えると次はハンマーの進行方向(走り)の調整です。一度ハンマーの先端の間隔を揃えます。

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ハンマーを一斉に弦にくっ付けてみます。いくつかバラバラの方向に行っていますが一番分かりやすいのは右から4番目と6番目のハンマーの先端の間隔が違い右に動いているので、このハンマーの動きを変えます。

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ハンマーを取り外し、  

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このように紙を貼り付けることによってハンマーの動きを変え、全て同じ方向に動くように調整します。

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弦の間隔も均等に揃えます。 

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ハンマーの間隔を揃え、弦の間隔も揃え、ハンマーの動きが同じ方向に動くようにした上で、最終的に全てのハンマーが弦のど真ん中に当たるようにします。

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中音部調整後の確認ちゃんとど真ん中に当たっています。

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低音部の調整後です。

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次は鍵盤(白鍵)の高さを適正な寸法に合わせ全ての高さ・傾きを揃えます

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鍵盤の下に赤いクロスと更にその下に数種類の厚みの紙(パンチング)を挟んで高さを調整します。これはアップライトピアノもグランドピアノもどのメーカーも同じです。

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平らな定規を鍵盤の上面に軽く当ててみるとこんなに隙間があります。つまり鍵盤の高さがガタガタです。おまけに写真の右から3番目の鍵盤は左に傾いています。

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傾きを修正した後にこのような紙(パンチング)を低い鍵盤に挟んでいきます。

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ピンセットを使い紙を挟んでは定規を当て隙間を見て何度も修正を重ねて平らになるまで調整します。

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鍵盤の高さが揃ったところです。

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最終的に目視でこのような角度から見て確認します。少し低い鍵盤がありますね。  

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Before&Afterの違いは分かりましたでしょうか。

 

次は鍵盤(白鍵)の間隔調整です。鍵盤のフロント(手前)ピンを左右に振って間隔を調整します。

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次は鍵盤(白鍵)の間隔調整です。鍵盤のフロント(手前)ピンを左右に振って間隔を調整します。

 

 

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中古ピアノが商品になるまでvol.4に続く
 
 


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株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


中古ピアノが商品になるまでVol.2(弊社の場合)

中古ピアノはきちんと手を入れると新品以上の性能を発揮するピアノになる可能性があります。

その訳はピアノの主材料は木材ですが、鉄やプラスティックと違い木材は年数が経過するほど堅く強固になるという木材の特性上、弦楽器と同様に古いピアノほど基本的には楽器としては優れるからです。

しかし実際には大半の中古ピアノの性能が劣るのは、安く販売するために内部のメカニズムの癖取りや錆び取りをはじめ、何よりも十分な調整が省かれている中古品が大半だからです。
 
手間(コスト)はかかりますが丁寧に調整すると中古ピアノと云えども、魅力的な性能を発揮するピアノに生まれ変ることがご理解いただけます。

弊社の中古ピアノが商品になるまでの作業工程を vol.1 vol.2 vol.3  vol.4  Vol.5  に分けてで詳しく案内しています

中古ピアノが商品になるまでVOL.2 

 
可能な限り錆を落とします。





ベアリングのピンもピカピカになりました。


次は鍵盤下のピン(バランスキーピン・フロントキーピン)磨きです。


スチールウールとコンパウンドで磨きました。





これはダンパー(右)ペダルの突上げ棒です。
右のペダルを踏むとこの棒がアクションのダンパーロッドを持ち上げてダンパーが始動します。
この先端が汚れていたので磨きました。
※ダンパーは弦の振動を止める役割で、ダンパーで音を止めます。

次は鍵盤です。



鍵盤の手前側(四角)木口こぐちが少し変色していたので貼り替えました。この修理で1日かかります。この木口はセルロイドで出来ているので経年変化で変色します。



※茶色に変色・変形した木口



鍵盤の奥にあるキャプスタンワイヤーが錆びているのでこれも磨きます。


 磨くとこれくらい違います。



鍵盤のキズや汚れを1鍵ずつ羊毛バフで研磨します。





ピカピカの新品同様になりました。


これでようやく下準備が整いました。
これから調整(整調・調律・整音)に入ります。


中古ピアノは調整に入るまでに部品を綺麗に磨いたり、消耗品を交換したりと随分手間(時間)がかかりますが、これをどこまでやるのか、つまり新品の部品に交換するのか現行の部品を綺麗に整えて使うのか、それとも全く何もしないのかによって販売価格も変わってきます。

中古ピアノはピカピカの外装だけでは見極めがかなり難しいと思われますが、これまでの内部の写真をご覧になった上で中古ピアノ選びをすると価格が妥当なのかどうかが分かってくると思います。

手間をかけなければ格安で、逆に消耗品の程度の良い中古品をじっくりと丁寧に仕上げていけば、価格はそこそこするかもしれませんがそれだけ高性能(音色、タッチ、響き)なピアノになります。

低価格重視か?それとも価格はそこそこでも弾き心地や綺麗な音色重視を重視するか?手間のかけ方の違いが性能の違いになります。 

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