ピアノの性能を最大限引き出すために

Tuning & Maintenance

相性の良いピアノとの出会いのために

Choosing a piano

ピアノ日誌

Piano Diary

Home>ピアノ日誌

ペダルを軽くしたい

タイトルの通り今回は、
「ペダルを軽くしたい」というご要望で、新品から2年目のカワイグランドピアノのペダルの内部の構造と重くなる原因をご紹介します。

 

まずペダルが重くなる原因は大きく分けて2つ。

ペダル、そしてダンパー。

ペダルが土台でその上にダンパーが乗っているので、今回は土台のペダルを細かく見ていきました。

 

 

ペダルをバコッと外し、
まずは原因その1・・・突上げ棒のトップの汚れ、または錆び。

原因その2・・・突上げ棒と途中覆われているフェルトとの擦れ。

 

 

原因その1・・・突上げ棒のトップがこんなに汚れていました。

ここを磨いてマックルーブという薬品でコーティングしました。

 

 

原因その2・・・突上げ棒とこの白いフェルトが擦れる部分を磨いて、フェルトにはテフロンパウダーを擦り込んで摩擦抵抗を減らしました。

 

 

 

原因その3・・・突上げ棒と底のゴムとの接触面がこんなに汚れていました。このまま放置すると雑音が出てきますので磨き上げてゴムにはテフロンパウダーをつけて摩擦抵抗を減らしました。

 

 

次にペダルをひっくり返して底の面を上に向けて、カバーを外します。
するとシーソーのように動く中央部分に軸があります。

 

原因その4・・・この軸が少し錆びてきてました。

 

磨いてツルツルにして、マックルーブでコーティング&テフロンパウダーをつけて摩擦抵抗を減らしました。

結果こういう動きになりました→こちら(1分動画)

 

 

次はペダルの突上げ棒がダンパーを持ち上げる仲介役を担っている部分です。

原因その5・・・L字金具の汚れ。これが軸になって回転運動といってもほんの僅かですがこれも磨き上げてマックルーブでコーティング&テフロンパウダーを付けて摩擦抵抗を減らしました。

 

 

外すとこんな感じです。

原因その6・・・L字金具が通る穴の側面との擦れです。ここもテフロンパウダーを擦り込んで摩擦抵抗を減らしました。

 

 

原因その7・・・最初の原因その1で突上げ棒のトップが当たる部分です。

中央部分に凹みがあります。
凹むことは仕方ないのですが、更にその中央部分が圧縮されてテカッてるのが見えるかと思います。
このテカッてる所と突上げ棒のトップが擦れる際にブレーキがかかるので少し解してテフロンパウダーを擦り込みました。ここはよく雑音が出るところです。

 

 

原因その8・・・ダンパーのリフティングレールを持ち上げる部分のロウソクと呼ばれる部品の先っちょが汚れていました(このロウソクとダンパーの仕組みを以前Youtubeでご紹介していますので、興味ある方はご覧ください→こちら

 

 

 

このロウソクの先っちょが若干汚れていたので、磨いてマックルーブでコーティング&テフロンパウダーをつけました。ちなみにこのロウソクの先っちょは中央に穴の開いた黒いゴムキャップ(カワイの場合)に当たります。

 

以上で、ペダルの掃除が終わって一度組み立ててお客様にペダルを踏んでいただきました。

これだけでも随分と軽くなりましたが、お客様はもっと軽くして欲しいと申し訳なさそうに言いました。

 

実は今回のお客様は、昨年突如全身の筋肉が弱まっていく難病になってしまい、一時期は鍵盤を底まで下げることができないほど筋力が弱くなったこともあったそうです。
そんな難病と闘いながら、それでも大好きなピアノが弾きたいという熱い想いにどうしても応えてあげたい!と私は決心して、最終手段を実行しました。

 

 

 

最終手段はこちらのコイルバネです。
これはペダルを上にあげた状態を素早く下に戻す役割ですが、このコイルバネの反発力を減らすべく同じ直径でバネが細いコイルバネを探しました。

 

 

いくつかホームセンターを回りなんとか見つかりました。

指でバネを圧縮して強度を比較すると明らかに軽くなったのでこれを装着してみました。

 

 

そしてお客様へペダルを踏んでいただきました。

 

写真でも見て分かるように踏ん張らなくても下までペダルが下がり、

すぐにこちらを向いてニコッと笑顔で、

「軽くなった、すごく良い」

と言っていただけて安心しました。

 

元々付いていたコイルバネと更にもう一段階細いバネも探せて用意していたので、今後回復してもそうでなくてもすぐに対応出来るようにお客様へ保管していただいてます。

ペダルが重くなってきたなと感じる方は、今回のような作業で大幅に軽くなりますので、もしお困りでしたら一度ご相談ください。

 

>>>ピアノのメンテナンスの重要性

>>>グランドピアノのダンパーペダルの仕組み

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


全ての調整の基礎は鍵盤調整です

専門用語で鍵盤あがきは鍵盤の深さ、鍵盤ならしは鍵盤の高さのことですが、全ての鍵盤の深さと高さが同じになるように調整しないと、鍵盤の上に乗るアクションの動きも全て狂ってきますので調整の基本と云われています。

YOU TUBEでもご案内しています

しかし鍵盤あがきや鍵盤ならしの前に、鍵盤に無駄な遊びがなく、全ての鍵盤がスムースに動くように調整しないと意味がありません。

全ての鍵盤がスムースに動くようにしてから鍵盤の高さと深さを同一に調整するのが鍵盤調整といいますが、手間がかかり鍵盤調整だけで手慣れた調律師でも新品でも1日、中古ピアノなら2日はかかります。

新品のピアノでも、あがきとならしの前にこれだけの作業が必要です。

鍵盤のピンも176本を磨き直します。

新品でも日に日に汚れてくるんです。

磨き終えたらマックルーブでコーティング。

油と違い膜を張るので錆びにくく滑りもよくなり、雑音処理等でピアノのアクションパーツにも使用します。


フロントキーピンの向きも同じ向きに揃えます。

鍵盤のブッシングクロスは雑音防止と摩耗を最小限にする目的でテフロンパウダーを擦り込みます。


バランスキーピンも位置を修正します。

鍵盤の奥のキャプスタンスクリューも磨き直し、左右で輝きが違うのがお分かりでしょうか。

鍵盤を左右に揺すって遊びを揃えます。

全体的にガタ気味だったので針を刺して隙間を狭くしました。こんな時短めのピッカー(整音時の針を刺す工具)が役に立ちます。


今度は持ち上げて元の位置に戻るか確認。



これは鍵盤あがきとならしの前にやるべき作業ですが、普段の定期のメンテナンスでも必要な作業です。



ピアノの性能を大切にお考えの方に3点の資料を無料進呈しています。

無料資料の詳しいご案内はこちらから

 

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


浜松ピアノ店の中古ピアノが商品になるまで VOL.1

中古ピアノは新品より劣ると考えられていますが、きちんと手を入れると新品以上の性能を発揮するピアノになる可能性があります。

You Tubeで音声でご案内しています



その訳はピアノの主材料は木材ですが、鉄やプラスティックと違い木材は年数が経過するほど堅く強固になるという木材の特性上、弦楽器と同様に古いピアノほど基本的には楽器としては優れるからです。

しかしながら実際には大概の中古ピアノは新品に比べて性能的に劣るのは、安く販売するために内部のメカニズムの癖取りや錆び取りをはじめ、何よりも十分な調整が省かれている中古品が大半だからです。
 
手間はかかりますが丁寧に調整すると中古ピアノと云えども、魅力的な性能を発揮するピアノに生まれ変ることがご理解いただけます。
※№5ではこの中古ピアノでの演奏動画も載せています。

弊社の中古ピアノが商品になるまでの作業工程を詳しく№1~№5でご案内しています

弊社の中古ピアノが商品になるまで vol.1

中古のヤマハYUXが入荷しました。

中古ピアノ1台を商品にするまでには実は結構な手間がかかります。

弊社の場合、買い取りをした中古ピアノは、まずは外装を綺麗にするため一度外注へ出しキズの補修やバフがけ(機械を使って磨き)ます。

それから店頭で開梱し中身の調整スタートです。

ピアノの状態によっては弦やチューニングピン・ハンマー・ダンパー等の消耗部品の交換修理をまず行ないますが、今回のヤマハYUXは消耗している部品はあまりなく(あまり弾かれていなかったようです)経年変化の汚れやサビが目立っていたので、大掛かりではない部品交換修理とサビ取りをまず行ないました。



中の状態をチェック。




ハンマーフェルトについた弦の溝。
中心に当たってなくずれたまま跡がついているので綺麗に整形し直します。

ハンマーを整形して新品の時の形状にしました。

連打する上でかかせないフレンジコード(白いヒモ)も新品に交換。環境にもよりますが
10年以上はもちます


打弦したハンマーを元の位置に戻す役割のブライドルテープ(赤いチップのついた紐)も
黄ばんでいたので新品に交換しました。




金属のスプリングがハマっている緑色の溝も雑音予防で掃除をしました。


アクションの裏側にある金属のスプーン(ダンパースプーン)と棒状(ダンパーロッド)のもの
が錆びていたので磨きました。磨く理由は部品が汚れやサビでザラついていたりすると部品同士が擦れ合って雑音が出るからです。


弦が巻きついているチューニングピン、約230本あります。
これも指で1本ずつ磨きます。







  vol.1 vol.2 vol.3  vol.4  Vol.5


中古ピアノが商品になるまでVOL.2に続く



只今、ピアノ選びで後悔しないための資料を無料進呈しています

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


ピアノ日誌Piano Diary


不要・中古ピアノ買取
ピアノ聴き比べ