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スタインウェイセミコンの定期メンテナンス

 

今日は某大学ホールにお伺いしました。
明日に催しがあるため事前メンテナンスです。

 

 

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ホールに入るとひんやり涼しく、当日と同じ空調にしていただいてとても助かりました。

 

 

 

 

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ピアノはスタインウェイCモデル、2番目に大きいセミコンです。

 

 

 

 

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オールカバーを外して屋根を開けてみると・・・むわっと熱気が。
内部の温度を測ってみると32℃。

室内温度と差があり、すぐに調律はできないので、
1時間以上馴染ませ(冷やす)てる間に、整調します。

 

 

 

 

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鍵盤を外して掃除から。

 

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鍵盤の真下のクッション(バランスパンチングクロス)に
髪の毛が1本のっかっていました。

たかが髪の毛1本と思うかもしれませんが、
これで鍵盤の高さが随分と変わってしまうのです。

 

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人間の髪の毛の太さは約0.06〜0.1mmですが、
鍵盤の高さを調整する際に、鍵盤の下に挟む
紙の厚みは一番薄くて0.03mmを使います。
髪の毛よりも薄い紙で調整しているので、
髪の毛のような太い物がのっかってるとその鍵盤は高くなってしまいます。
最初に鍵盤下を掃除する目的はこのためです。

 

 

 

 

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鍵盤の奥についているキャプスタンスクリュー、
前回磨いて今回はまだピカピカでした。

 

 

 

次にアクションをつけて本体に入れ、棚板調整です。
鍵盤からのパワーをロスなく弦まで伝えるために、
鍵盤フレームと本体の棚板を隙間なく密着させる作業です。

 

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鍵盤フレームの裏にはこのような丸いボタン(ベッティングスクリュー)があります。
上からみると棒状のものになっていて、これを回して出したり引っ込めたりして調整します。
棚板と鍵盤フレームが浮いてるか密着しているかは、
真ん中部分を指で叩いて音を聴いて判断します。
実際の作業はこんな感じです。

棚板(ベッティングスクリュー)調整動画

 

 

 

次は鍵盤の両サイドについている拍子木の圧力の調整です。

 

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鍵盤の手前側の木の部分を叩いて、浮いていないか音を聴きます。
これが一番右端が浮いている音です(動画)

拍子木圧力調整動画

トントントン・・・コン!
音が違うのが分かりましたか?これが浮いてる音です。

 

 

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浮いているとパワー漏れするので、拍子木の金具で調整します。

拍子木圧力調整後再確認

調整後、他のところと同じ音になりました。
左手の親指で軽く持ち上げた時はコン!と
浮いた時の音になるよう圧力をかけすぎないよう微調整します。
圧力がかかり過ぎると、一番左のシフトペダルを踏む時に
ブレーキがかかり重くなるので慎重に調整が必要です。

 

 

 

 

次はアクション調整です。

 

 

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ハンマーの間隔、弦へのポジションチェック。今回良好でした。

 

 

 

 

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連打にかかせないジャック前後・高さ調整。

 

 

 

 

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そのジャックの動くタイミングを揃えるハンマー接近調整とドロップ調整。

 

 

 

 

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全てのハンマーが打弦後、15mmでストップするように調整。

最後にハンマーが持ち上がる速度を調整するスプリング調整。
ピアニッシモや同音連打するためにはには欠かせません。
調整後はこんな感じです

スプリング調整動画

 

 

 

作業を初めて2時間程経過、

 

 

 

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ピアノの内部温度は26℃まで下がりました。そろそろ調律が出来ます。

 

 

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49A=442Hzに調律。

 

 

 

 

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調律後、硬い音のハンマーに少しだけ針を入れてほぐしました。

 

 

 

 

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鍵盤蓋やその他パネルをして雑音チェックです。
譜面板の蝶番に共鳴していたので確認してみるとネジが緩んでいました。

 

 

 

 

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外装を磨いて作業完了です。

明日は気持ち良く弾いていただけると嬉しいです。

 

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


よく弾きこまれているかどうかのチェック方法

 

 

「このピアノはよく弾かれているな」

 

ピアノの中を見れば技術者はすぐに分かります。では、どの部品をチェックしているのでしょうか。

その答えをお見せします。

 

 

 


 

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一番分かりやすいのがハンマーです。
よく弾く鍵盤には自ずと弦の型がハンマーにつきます。この型(溝)が深くなっているかを見ています。

 

 

 

 

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次にハンマーを受け止めるバックチェックという部品に貼られている黄色いスキン(合成皮革)が摩耗しているかを見ます。

 

 


 

 

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次に丸いローラースキンが摩耗してぺちゃんこになっていないかを見ます。

 


 

 

 

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次は鍵盤の金属のピンと擦れるブッシングクロス(赤い部分)が真ん中(バランス)と手前(フロント)の2ヶ所の摩耗具合を見ます。

 

とりあえずは最低これくらいはチェックしますが、これはパネルを外してみないとハッキリ見えません。

しかし、パネルを外さなくてもすぐによく弾かれているか分かる場所があります。

さぁどこでしょうか。

 

 


 

正解は

 

 

 

 

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鍵盤?

 

 

 

そう、鍵盤ですが実は黒鍵です。

 

 

 

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このように黒鍵は、木の上にプラスチックや黒檀等が貼られていますが、木の部分は塗料で黒く塗っています。
白鍵を弾く時に僅かに黒鍵の側面に指や爪が当たり、そして少しずつ擦れて塗料が剥げてくるのです。
この剥げ方が弾く頻度によって異なるので、技術者はさりげなくこんな所も見ているわけです。

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


調律が狂いやすい3つの条件

 

「調律がもう狂ってきた」

 

このような声をよく聞きます。なぜうちのピアノは調律が早期に狂うのか、どうしたら狂いにくくなるのか。

 

 

 

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実は調律には狂いやすい条件が大きくわけて3つあります。

 


①よく弾く
毎日よく弾く、つまりハンマーで弦を叩く回数が多いまたは強打されると、弦が振動されて伸び、少しずつ狂ってきます。

 

 

②弦が新しい
弦楽器されている方は分かると思いますが、新しく弦を張るとチューニング(調律)してもすぐに音が下がってきます。
新しい弦はある一定のところまで伸びるのでその間はどんどん音が下がり、頻繁に引っ張ってチューニング(調律)が必要です。これはピアノも同じで、新しい弦つまり新品のピアノは弦が一定のところまで伸び、安定するまでに早くても2〜3年はかかるためその間はどんどん音が下がって(狂って)きます。

 

 

③空調管理が行なわれていない
これは温度と湿度です。
例えば冷暖房の風を直にピアノにあてると弦やフレームが伸縮しすぐに狂ってきます。
次に、調律する際の温度から±3度以上の変化があると同じく弦やフレームにも影響するので弾かなくても狂ってきます。調律時の温度に戻すとピタッと合ってきますが。
最後に湿度変化です。多湿も過乾燥もピアノには良くないですが、どちらかといえば過乾燥が調律には影響します。50%前後だと大丈夫ですが、30%台の過乾燥は木材が痩せネジが緩むのです。よって調律ではチューニングピンが打ち込まれているピン板が痩せチューニングピンが緩み、結果音が大きく下がってきます。古いピアノもピン板が経年変化で痩せてくるので同じ結果になります。

 


うちのピアノは調律が狂いやすいなと感じたら、これらの3つの条件に当てはまってないか確認してみてくださいね。


※余談ですが、最近は床暖房している家が増えてきました。意外と知らない床暖房は過乾燥の原因の一つで、ピアノの下に断熱パネル等の処置を行わないと上記のような結果になるだけでなく、本体やアクションに多く使用されているネジも全て緩んできますので注意が必要です。

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


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