[ ]浜松のディアパソンの名匠、乗松氏のご紹介
浜松の竜洋工場のディアパソンの展示場で出荷調整を行う乗松氏とそれをご紹介中の植田です。
現在80歳になられる乗松氏ですが、まだ現役で頑張っておられます。
その乗松氏がもう7年前に弊社にご来店頂いた時のことをご紹介します。
浜松からディアパソンピアノの設計者として有名な、故、大橋幡岩氏に直接指導を受けたと云われる乗松氏(当時73歳、現在80歳)が岡山の弊社まで若手の指導ということで、1泊で浜松からわざわざ来て下さいました。
私も昔から存じ上げており、彼は根っからの職人さんで、謙虚で穏やかな人柄と認識していましたが、落ちついてゆっくりお話をさせていただいたのは、今回が初めてでした
失礼ながらお歳のことを考えると、いつまで現役でおられるのか分からないので、この機会に、設計者の大橋氏のことやピアノ作りの難しさ、良いピアノの本質など、日頃はなかなか聞けないことを乗松氏から直接聞くことができました。
特に若い技術者が彼のピアノの調律や調整に対する姿勢や哲学を直接聞けるということは、彼らの将来のために大いに為になると期待しました。
弊社の展示中のディアパソンの整音をしてくれているところです
私が乗松氏の話を聞いて、興味深かったことがいくつかありました。
乗松氏が云うには、今の日本には、もう、一からピアノを設計できる人はいなくなった、日本人でピアノ全体を一から設計出来る人は、恐らく大橋幡岩氏が、最後の人であろう、ということでした。
今は部分、部分の細かい数値はコンピューターで設計するようだけれども、やはりピアノ全体のことを考えて、一から設計するのは明らかに人間の方が優れていて、そのような意味で、コンピューターよりも人間の方が優れているというお話でした。
これには私も全くの同感で、私からすれば、まさに我が意を得たりの心境でした。
その例として、ピアノの特性を決定する大きな要素の一つに金属フレームがあります(フレームにより弦の張力や弦の太さが微妙に異なってきて、ピアノの特性が変わります。
あまり大きな声では言えないけれども、日本の大手メーカーのピアノは、少し古くなると、高音部の張力の強い細い弦が、フレームの下に食い込んできて高音部がシャリン?シャリン?とした安っぽい音になることがあります。
それが大橋氏の設計したフレーム、今のディアパソンで云うと、唯一、奥行183㎝のピアノだけがそのフレームを使っていますが、このピアノは不思議なことに、そのようなことが起こらないのだそうです。
それと真に良いピアノを作るには、基本設計の良さに加えて、最良の材料を使い、人の手で、時間をかけて丁寧に仕上げることが重要であると云ったことでした。
特に最終工程は、機械ではなく、人間の手で丁寧に仕上げることが肝要だそうです
今の乗松氏の主な仕事は、浜松の竜洋工場で、ディアパソンの出荷調整をすることですが、ちなみにディアパソンのグランドピアノの出荷調整には、どの位の時間をかけられているのですか?という質問に、1台に1日半から2日かけますとのご返事でした。
※ちなみに現在は1日(8時間)になっていますで不十分と云えます。
大手メーカーのグランドピアノの出荷調整の作業時間が、調律学校を出て間もない若い技術者が、ヤマハのCシリーズで2時間半、高級なSクラスのグランドピアノでも8時間(1日)しかかけないことに比べて、調整の重要性に対する認識や意識レベルにもディアパソンの違いを感じました。
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