[ ]鍵盤が重くなる原因
ピアノは、複雑なメカニズムをもつ楽器だということはこれまでピアノ日誌で載せてきましたが、
たとえ丁寧に調整(整調・調律・整音)されたピアノでも、環境(特に湿度)によってはその効果が半減することがあります。今回はその一例をご紹介します。
手の力を限りなく抜いて鍵盤を半音階で弾いていくと、特定の鍵盤が重く感じることがあります。
これは、鍵盤・アクション・ダンパーの3つの内いずれかが原因ですが、今回メンテナンスを行なっていたスタインウェイセミコン(Cモデル)はアクションが原因でした。
湿気によってアクションメカニックの関節部分の赤いクロスが膨張して、その中に入っているピンを締めつけて円滑な動作が出来ていないことが原因です。これを業界用語で「スティック」と言います。
このスティックが、丁寧に調整された状態のピアノの効果を半減させてしまうどころか、最悪の場合、鍵盤さえも上がらなくなってしまうのです。
このスティックを確認するには幾つか方法がありますが、弦を打つハンマーのバウンドで判断することも出来ます。
この動画を見てみると、右のハンマーが降りた時に少しバウンドするのに対し、
一番左のハンマーは、もたついてバウンドしていません。
ブレーキがかかっていて「スティック」の状態です。これが特定の鍵盤を重くしていたのです。
この修理は一旦このピンを抜いて、ピンの周りを覆っている赤いクロスを削り、ピンがスムーズに動く硬さになるよう調整します。
空調管理が出来ていないと新品のピアノでも起こるので、特に湿度管理はピアノにとってとても重要なのです。
※アクションを引き出さなくても譜面台を外して、弦の隙間から見ることが出来ますので、今回ご紹介したハンマーのバウンドを一度確認してみてくださいね。