[ ]快適に弾いてもらえるように
今日はお客様宅のプライベートホールでプロのピアニストをお招きして
コンサートをするということで朝から事前メンテナンスにお伺いしました。
ピアノはペトロフP173 Breeze
天井も高く気持ちよく音が響いてくれる環境。
しかし最初の確認で、高音部の数箇所でうまくパワーが乗ってない、
つまりパワー漏れしている部分があり、原因を探しました。
パワー不足だけでなく少しカチッとした音が混ざっていたので、
おそらくハンマーシャンクのフレンジかサポートフレンジのガタツキと予想。
ハンマーシャンクフレンジとサポートを外し関節部分を確認。
◯(マル)で囲ってある部分がアクションの関節部分です。
予想通り右下のサポートフレンジ関節部分のガタツキが原因でした。
ガタツキ、歯がぐらつくと言えば想像しやすいでしょうか。
ぐらつくと硬い物が噛めませんよね。ピアノも同じでガタツキがあると
パワーが出ないので、そのガタツキを直すために一度中心のピン(センターピン)を
抜き、ワンサイズ大きい太さのピンを使います。
ワンサイズ太いセンターピンを左右に入れてスムーズに入るか確認します。
少しきつ過ぎたのでヤスリでセンターピンを覆う役割の赤いクロスを少し削ります。
緩すぎても、きつ過ぎてもダメなので慎重に少しずつ削ってはピンを入れて確認、
この繰り返しで左右を同じ硬さに揃えます。
ピンを入れて飛び出た部分をカットしたら出来上がり。関節の動きを確認します。
これでガタツキがなくなり、しっかりと鍵盤からハンマーまでパワーが伝わる準備が出来ました。
この後、整調(アクション調整)でその効果を発揮させます。
連打がスムーズに出来るようにジャックの前後・高さを調整。
この後ハンマー接近、ドロップ調整をして、
打弦後のハンマーストップは弦から全て15mmで揃えます。
ピアニッシモからフォルテッシモまで出すにはこの距離を揃えることが重要です。
最後はスプリング調整。今回は全て良い感じに揃っていました。
この後、調律をして、整音の微調整で終了。
演奏者はハンガリー人のファルカシュ・ガーボル氏。
プロフィール:
ハンガリー国立リスト音楽院卒業後、博士課程をSK.Kocsis、T.Vasary各氏の指導の元に修了。
2009年、第6回国際フランツ・リストピアノコンクールで優勝の他、多くのコンクールに入賞。
2012年には“リスト賞”を受賞し、すでにリストの音楽院で後進の指導にも当たっている。
2016年3月、カーネギーホールでリサイタル、絶賛された。
今回演奏会終演後のコメントで、ピアノのコンディションが良かったと
言っていただけたようで嬉しい限りです。