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ピアノコンクール中国予選会に行ってきました

今日は、ブルーメンシュタインピアノコンクール予選会のピアノの調律で倉敷市玉島にある湊ホールに行ってきました。

ここ湊ホールは、客席360席と小さなホールですが、ピアノの発表会から演劇会、講演会等地域の交流の場としても様々な催し物が行なわれています。

 

 

 

ブルーメンシュタイン代表の秋山しのぶさんです。

一見小柄な女性に見えますが、たくさんの仕事を一人で何でもこなす超ストイックなスーパーウーマンです。

この日も朝早くから会場準備のため、重い荷物を運んだり小道具を並べたりと一人でテキパキとこなしていました。

 

 

 

そんな秋山さんにいつも良い刺激を受けている私ですが、今回は少人数のスタッフ運営だったのでピアノの調律以外で何かお役に立てることがないかな・・・と思っていたら、秋山さんから重要なお仕事をいただきました。

それは・・・

 

 

それは動画撮影です。

コンクールの舞台裏、つまり運営側や審査員の普段一般公開されない様子をみなさんにぜひ紹介したいということで密かに何か面白いものを作る予定だそうで、その舞台裏の様子を動画に納めるお手伝いをさせていただきました。

というわけで、今日はピアノ調律兼ブルーメンスタッフとして最後まで楽しませていただきました。

 

 

 

 

伊藤先生の演奏、舞台袖からでも素晴らしかった。

 

 


審査員の先生たちと
左から濵本恵康先生、筆者、友光雅司先生伊藤憲孝先生

 

コンサートの舞台裏は何度も経験していますが、コンクールは初めてでとても楽しく貴重な体験をさせていただきました。

 

 

>>>ブルーメンシュタインピアノコンクールofficial website

>>>ピアノ講師能力育成プログラム実践講座

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


ピアノ庫で前日調整

ここはピアノ庫です。

ピアノ庫は空調管理を行なう部屋で、24時間同じ温度湿度をキープすることができます。

ピアノは木材・フェルト・クロスといった自然素材に加え金属部品も使用していますので、多湿や過乾燥な環境に置くと各部品が変形(伸縮)したりサビたりしてきますので、特に湿度は出来る限り一定(50%前後)に保つことがピアノにとっては良い環境とされています。

 

 

いつも立会いのコンサートの時は終演後にピアノをこのピアノ庫に戻して、
「過酷な環境の中、今日一日おつかれさま!」 と心の中で話しかけて帰るのですが、実は本番のステージでは空間も広い為なかなか空調(温度湿度)を保つ事が厳しいため、また熱い熱いライトも浴びてピアノも熱くなってくるのでまさにステージはピアノにとっては過酷な状況なのです。

ですので本番が終わると、このピアノ庫の心地良い環境で休んでもらいます。

 

 

 

今回は明日に小中学校の音楽発表会で使用するため前日調整をしました。
ステージはたくさんの人で準備をしていたため今回はピアノ庫で作業です。

 

 

 

早速状態はどうかな?と鍵盤を押し下げてみると・・・

鍵盤が明らかに深い。

 

 

鍵盤のアフタータッチが明らかに多いので、打弦距離(静止状態のハンマーから弦までの距離)の寸法を測ってみると、やはり狭い。

 

 

 

棚板の変化でベッティングスクリューのボタンが張り気味になっていたことが原因でした。
調整し直すと、鍵盤の深さや打弦距離も正常値に戻りました。

(棚板調整の解説動画はこちら

 

 

ちなみにですが、ベッティングのボタンが張り気味になると、鍵盤の両端についているこの拍子木の中央白い部品に必要以上に圧力がかかったまま擦れるので、シフトペダル(左のペダル)が異様に重く感じたり雑音(圧力がかかるので棚板が擦れる音)が出たりします。

 

 

 

調律は微調整で済みました。

 

 

スタインウェイのフルコンDモデルは低音部の巻線が3本のところがあるので(Sモデル~セミコンCモデルは低音巻線は2本まで)フルコンならではの低音部がハッキリとした音階が出せて気持ち良く感じます。もしフルコンに触れる機会があればこの低音を意識してみてください。きっと違いが感じられると思います。

 

 

 

おまけですが、ピアノカバーの畳み方の手順です(戻す時は逆の手順)

右折って、左折って、クルクル巻きます。

 

>>>ピアノの調律するタイミングは?

>>>ピアノの湿度対策の記事

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


ピアノから出る雑音〜蝶番編〜

 

「弾いてる時に何か変な音が混ざって聴こえる」

「日によって変な音が出たり出なかったりする」

 

このような言葉をメンテナンスの現場でよく耳にします。

 

これは「共鳴振動」といって、同じ固有振動数を持つもの同士が干渉し合う現象ですが、

例えば、

・長さの同じ振り子の一つを揺らすと、もう一つも揺れだす。
・グラスをスプーンで軽く叩くと、触れていない同じ大きさのグラスも震える。

これが共鳴振動です。

実はピアノも同じ現象がよく起きて、音を鳴らした時に同じ周波数の物が同時に震えだして共鳴することがあります。

 

 

アコースティックピアノを弾かれる方は見たことあるかと思いますが、ピアノには蝶番がたくさん使われています。
これはグランドピアノですが、屋根を開け閉めするためにこのような蝶番がついています。

 

 

 

屋根の左側にもついています。

 

 

譜面板にもよく見ると蝶番がついています。

 

この蝶番が鍵盤を弾いた時に共鳴して、金具が震えて雑音が出るのです。

ではこの共鳴振動をなくす方法は?

 

結論から言いますと ・ ・ ・

 

残念ながら、完全に共鳴しないようにすることは不可能です。

 

 

では諦めろと?

いえ、出る確率を減らす方法はあります。

 

それは出来る限りネジを固く締めて隙間をなくし震えないようにするというもので、

これは私のやり方ですが、まずはどこに共鳴しているか音の出所を特定して、その部分のネジというネジをとにかく増し締めします。
ネジがバカになっているところは埋め木をするか長めのネジを入れ替えるかして、できるだけ固くなるように締めます。

 

 

 

ネジが緩んでいると隙間ができて、金具やプラスチック等が震えて接触面から雑音がでるのです。

このネジの増し締めでも共鳴が治まらない場合は、蝶番の中に入っている芯棒(軸)を金槌で叩いて少しずらします。それでも治まらない場合は、芯棒を少し抜いて数か所プライヤーで曲げて入れ直します。これで回転運動が少し妨げられ硬くなるので共鳴が出にくくなります。

 

 

  

鍵穴からもよくビビリ音がするので、可能な限り分解してネジの緩みをチェックします。

 

ここまでしても、また共鳴振動が起こることがあります。なぜでしょう?

 

それは湿度です。

 

このネジたちはほとんどが木材に取り付けられています。
その木材は多湿だと膨らみますし、逆に乾燥すると痩せてきてネジが緩んできます。

ですので、日によって共鳴現象が出たり出なかったりするのは、その日の天候や空調によって湿度が変わるためなのです。

 

この共鳴振動現象は新品、中古関係なくほぼ全てのピアノはこの蝶番を使用しているので、必然的に

ピアノは共鳴振動が起きる楽器なのです。

 

しかし出来る限り共鳴する確率を減らしたいのであれば、対策として定期メンテナンス時にネジの増し締めをしてもらい(その際に、どこの音を弾いた時に雑音が出たか予めメモをしておいて技術者にお伝えしてみてください)、また普段から空調管理をするなど心がけてみてください。

 

今回は雑音の原因として蝶番をピックアップしましたが、実はピアノ内部の雑音はこの蝶番だけではないのですが、それはまたの機会にご紹介したいと思います。


>>>ピアノの空調管理について

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


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