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中古ピアノが商品になるまで〜vol.3

前回の続きです。

 

これまでをご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

中古ピアノが商品になるまでvol.1

中古ピアノが商品になるまでvol.2

 

 

 

 

 

鍵盤にはフロント(手前)とバランス(真ん中)に金属のピンがあります。このピンの位置や方向を揃えていきます。

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まずはフロントのピンに定規を当てがい、ピンを回して全て同じ方向(定規に対して直角)にしていきます。

 

 

 

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つづいてバランスのピンにも定規を当てて同じ位置に並ぶようにします。

 

 

 

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下の部分が白鍵で上の部分が黒鍵になります。白鍵のピンが揃いました。

 

 

 

 

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鍵盤の先端をつまんで左右に振ると1mm程の遊びが出来るようにします。88鍵全てチェックし遊びがない場合は鍵盤を外して調整します。  

 

 

 

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 鍵盤の裏側に赤いクロスがありますがこの穴の幅が狭い、つまり遊びがなかったので広げます。

 

 

 

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圧縮する工具で微調整します。やり過ぎる(潰し過ぎる)と反対にガタツキになるので慎重に行ないます。

 

 

 

 

 

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次はバランス(真ん中)の穴の調整です。

このように鍵盤を少し持ち上げて、

 

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手を離すと元の位置に鍵盤が戻るか88鍵チェックします。

 

 

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このように降りてこない場合は、どこかが窮屈に引っかかっているので調べます。

 

 

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1箇所は赤いクロスが先ほどのフロントと同じように狭くなっていたので工具で圧縮して広げます。

 

 

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それでも鍵盤が降りてこなかったので今度は鍵盤の木の部分の穴が極端に狭くなっていたのでヤスリで広げ丁度良い具合に調整します。これを88鍵全てチェックし同じスピードで鍵盤が降りるように調整します。

 

 

 

 

 

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次は鍵盤の上に乗っているアクションメカニックの調整です。

ハンマーの方向(傾き)が正しいか高音部・中音部・低音部全て調べます。

 

 

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左に傾いているハンマーは首の部分(シャンク)に熱を加え右に捻って修正します。

修正後の確認動画です→確認 (ハンマーを一つずつ前進させ動きを見ながら傾いていないか確認します)                        

 

 

 

   

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ハンマーの傾き(捻じれ)を全て揃えると次はハンマーの進行方向(走り)の調整です。一度ハンマーの先端の間隔を揃えます。

 

 

 

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ハンマーを一斉に弦にくっ付けてみます。いくつかバラバラの方向に行っていますが一番分かりやすいのは右から4番目と6番目のハンマーの先端の間隔が違い右に動いているので、このハンマーの動きを変えます。

 

 

 

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ハンマーを取り外し、  

 

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このように紙を貼り付けることによってハンマーの動きを変え、全て同じ方向に動くように調整します。

 

 

 

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弦の間隔も均等に揃えます。 

 

 

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ハンマーの間隔を揃え、弦の間隔も揃え、ハンマーの動きが同じ方向に動くようにした上で、最終的に全てのハンマーが弦のど真ん中に当たるようにします。

 

 

 

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中音部調整後の確認ちゃんとど真ん中に当たっています。

 

 

 

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低音部の調整後です。

 

 

 

 

 

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次は鍵盤(白鍵)の高さを適正な寸法に合わせ全ての高さ・傾きを揃えます。

 

 

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鍵盤の下に赤いクロスと更にその下に数種類の厚みの紙(パンチング)を挟んで高さを調整します。これはアップライトピアノもグランドピアノもどのメーカーも同じです。

 

 

 

 

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平らな定規を鍵盤の上面に軽く当ててみるとこんなに隙間があります。つまり鍵盤の高さがガタガタです。おまけに写真の右から3番目の鍵盤は左に傾いています。

 

 

 

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傾きを修正した後にこのような紙(パンチング)を低い鍵盤に挟んでいきます。

 

 

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ピンセットを使い紙を挟んでは定規を当て隙間を見て何度も修正を重ねて平らになるまで調整します。

 

 

 

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鍵盤の高さが揃ったところです。

 

 

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最終的に目視でこのような角度から見て確認します。少し低い鍵盤がありますね。  

 

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Before&Afterの違いは分かりましたでしょうか。

 

 

 

 

 

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次は鍵盤(白鍵)の間隔調整です。鍵盤のフロント(手前)ピンを左右に振って間隔を調整します。

 

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今日はここまで、まだまだ続きます。

 

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


中古ピアノが商品になるまで~vol.2

 

前回の続きです。

 

 

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弦のサビを可能な限り落とします。

 

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ベアリングのピンもピカピカになりました。

 

 

次は鍵盤下のピン(バランスキーピン・フロントキーピン)磨きです。

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スチールウールとコンパウンドで磨きました。

 

 

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これはダンパー(右)ペダルの突上げ棒です。
右のペダルを踏むとこの棒がアクションのダンパーロッドを持ち上げてダンパーが始動します。
この先端が汚れていたので磨きました。
※ダンパーは弦の振動を止める役割で、ダンパーで音を止めます。

 

 

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次は鍵盤です。

 

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鍵盤の手前側(四角)木口こぐちが少し変色していたので貼り替えました。この修理で1日かかります。この木口はセルロイドで出来ているので経年変化で変色します。

※茶色に変色・変形した木口cimg0059

 

 

 

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鍵盤の奥にあるキャプスタンワイヤーが錆びているのでこれも磨きます。

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 磨くとこれくらい違います。

 

 

 

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鍵盤のキズや汚れを1鍵ずつ羊毛バフで研磨します。

 

 

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ピカピカの新品同様になりました。

 

 

 

 

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これでようやく下準備が整いました。これから調整(整調・調律・整音)に入ります。

中古ピアノは調整に入るまでに部品を綺麗に磨いたり、消耗品を交換したりと随分手間(時間)がかかりますが、これをどこまでやるのか、つまり新品の部品に交換するのか現行の部品を綺麗に整えて使うのか、それとも全く何もしないのかによって価格が変わってきますので、ピカピカの外装だけでは見極めがかなり難しいと思われますが、これまでの内部の写真をご覧になった上で中古ピアノ選びをすると価格が妥当なのかどうかが分かってくると思います。
手間をかけていなければ格安で、消耗品の程度の良い中古品をじっくりと丁寧に仕上げていけば、価格はそこそこするかもしれませんがそれだけ魅力的なピアノになります。インテリア重視なのかそれとも弾き心地や綺麗な音色重視なのか、まずはそこが重要です。

もっと詳しく知りたい方はこちらから→中古ピアノのメリットとデメリット

 

 

 

調整はまだまだ続きます。

 

 

 

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


中古ピアノが商品になるまで〜vol.1

中古のヤマハYUXが入荷しました。

中古ピアノ1台を商品にするまでには実は結構な手間がかかります。

弊社の場合ですが、買い取りをした中古ピアノは、まずは外装を綺麗にするため一度外注へ出しキズの補修やバフがけ(機械を使って磨き)ます。

それから店頭で開梱し中身の調整スタートです。

 

ピアノの状態によっては弦やチューニングピン・ハンマー・ダンパー等の消耗部品の交換修理をまず行ないますが、今回のヤマハYUXは消耗している部品はあまりなく(あまり弾かれていなかったようです)経年変化の汚れやサビが目立っていたので、大掛かりではない部品交換修理とサビ取りをまず行ないました。

 

 

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中の状態をチェック。

 

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ハンマーフェルトについた弦の溝。

中心に当たってなくずれたまま跡がついているので綺麗に整形し直します。

 

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ハンマーを整形して新品の時の形状にしました。

 

 

 

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連打する上でかかせないフレンジコード(白いヒモ)も新品に交換。環境にもよりますが10年以上はもちます。

 

 

 

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打弦したハンマーを元の位置に戻す役割のブライドルテープ(赤いチップのついた紐)も黄ばんでいたので新品に交換しました。

 

 

 

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金属のスプリングがハマっている緑色の溝も雑音予防で掃除をしました。

 

 

 

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アクションの裏側にある金属のスプーン(ダンパースプーン)と棒状(ダンパーロッド)のものが錆びていたので磨きました。磨く理由は部品が汚れやサビでザラついていたりすると部品同士が擦れ合って雑音が出るからです。

 

 

 

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弦が巻きついているチューニングピン、約230本あります。

これも指で1本ずつ磨きます。

 

 

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まだまだ続きます。

 

中古ピアノのメリットとデメリット

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


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