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明日にむけて

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明日のリレーコンサートにむけて整調の確認です(ハンマー接近調整)

 

 

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ピアノはどんなに丁寧に調整してもそれで終わりではなく、変化するので何度も何度も調整が必要です。

 

明日は午後から本番なので、午前中に調律と整音の確認をして、参加するみなさまにベストコンディションで弾いていただけるように丁寧に調整します。

 

 

 

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使用ピアノ→ペトロフP210 Pasat

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


中古ピアノが商品になるまで~vol.5

 

前回のつづきvol.5です。

これまでをご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

 

・中古ピアノが商品になるまで~vol.1

・中古ピアノが商品になるまで~vol.2

・中古ピアノが商品になるまで~vol.3

・中古ピアノが商品になるまで~vol.4

 

 

 

 

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弦が駒から浮いていないか真鍮棒で軽く叩いてしっかり密着させます。
これにより弦の1本うなりが解消されます。(通常弦は1本だけではうなりは発生しません)

 

 

これから調律です。

まずは49番目のA(ラ)の音を442Hzに合わせてから調律します。
チューナーで測ってみると

 

 

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436Hz。

かなり下がっているので、一度下律(粗調律)をします。
1~2Hz程度でしたらそんなに弦を緩めたり引っ張ったりしなくて済むので、
1回の調律で合わせることができますが、6Hzを急に上げる(引っ張る)と
短時間でまた下がって(戻って)くるので下律といって近いところまで全体の弦を引っ張ります。
下律の時間は20~30分程です。

 

 

 

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49Aを445Hzでとり下律をします。

 


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ざっくり下律が終わり、

 


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最初の49A(ラ)を測ってみると・・・

 

 

 

 


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予想通り441.8Hzまで下がっていました。
ここから442Hzで改めてとりなおし本調律(調律)です。

 

 

 

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調律が終わると次はハンマーの弾力を調整する整音です。

 

 

 

 

 

 

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まずは弦とハンマーの噛み合わせの調整をします。
歯の噛み合わせをイメージしていただくと分かりやすいと思います。
2本(低音部)または3本(中音~高音部)の弦が、同時にハンマーに当たるように削ってレベル(高さ)を合わせるため、一度ハンマーに色をつけます。

 

 

 


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カーボン紙を弦につけ、それをハンマーに移します。

 

 

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このように色がついて見やすくなりました。
ちゃんとハンマーのど真ん中に当たっているか再確認もできます。

 

 

 

 

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ハンマーを弦にあてた状態で弦を1本ずつはじいて音の長さを聴きます。
当然先に早くあたっていると音の長さが短いので、ハンマーのその部分(3本あれば左or真ん中or右)を板ヤスリで削ります。

写真ではわかりづらいので動画でどうぞ。

image弦あたり調整動画

 

 

 

 

 

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弦あたり調整が終わり一度全鍵を強く弾いて耳につく音があればチェックします。

 

 

 

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気になるところをチョークで印をつけていきます。

 

 

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耳につくような硬い音がたくさんあったのでハンマーに少しずつ針をさして再度確認。
深くさしたり先端付近を軽くさしたりと、針を入れる場所や深さによって音が随分変わりますので隣同士の音色(音質)と同じようになるように慎重に行ないます。

 

 

 

 

これで鍵盤・アクション・弦の調整が終わったので、一度テストで弾いてみます。

すると・・

 

 

 

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ペダルを踏み、上げた時にきしむような音が出ていました。

 

 

 

 

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下パネルを外して見てみるとやはり・・・

 

 

 

 

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この黒いクロスが当たっているところは

 

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ここです。クロスが圧縮されて硬くなっていたので貼り替え。

 

 

 

 

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これが当たっているところは

 

 

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このダボ穴です。

 

 

 

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オスの方にテフロンパウダーを擦り込ませました。
パネルをして再度弾いてみると、先ほどのきしみは消えました。

 

 

 

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次は真ん中のペダルの弱音マフラーの貼り替えです。
よく形がついていますね。
このピアノの元の所有者は、ハンマーの消耗具合とマフラーの消耗具合から見て、弱音ペダルをしたまま弾くことの方が多かったように思います。

 

 


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剥がして裁断して貼り替えます。
上から低音、中音、次高音、高音と厚みが違います。

 

 

 

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貼り替え後弱音ペダルの効き具合を調整します。

 

 

 

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鍵盤押えを固定して

 

 

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鍵盤蓋を乗せて

 

 

 

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上前板を着けたら、ようやく形になっていました。

 

ちなみにこの上前パネルはトーンエスケープ仕様になってます。

 

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通常のアップライトピアノは上前パネル(板)がフラットになっているため屋根の蓋をしめると後ろからしか音が抜けませんので、屋根をあけない限り音が中でこもってしまいます。
トーンエスケープは上前パネル(板)に隙間があるので、
後ろからだけでなく前からも音が抜けるので少しだけこもった音が解消されます。

 

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内側から見ると構造がよくわかります。

 

 

 

 

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再度雑音チェックも終わり作業が完了しましたので、音色の確認で田中先生に試弾していただきました。

 
image中古ピアノ ヤマハYUX試弾動画(3分25秒)

 

 

 

いかがでしたでしょうか。
少し長くなりましたが、中古ピアノが入荷して商品になるまでの一連の作業をご紹介しました。
相対的に安価な中古ピアノですが、本来の性能を発揮させるためには面倒な修復や調整作業が必要だということがご理解いただけたかと思います。ピアノの調整作業というものは、省こうとすればほとんど省けます(格安ピアノの正体です)が、省かずに一つ一つの作業を順番に丁寧にやると、いかなるピアノであれ確実に性能(タッチや音色、響き)の良いピアノになります。格安中古ピアノのカラクリをご理解いただけた上で、より多くの方に後悔しないピアノ選びをしていただきたいと心から願っています。

 

 

 

中古ピアノのメリットとデメリット

 

 

1台1台丁寧な調整を心がけています

三木 淳嗣(委託調律師)


中古ピアノが商品になるまで~vol.4

 

前回の続きvol.4です。

これまでをご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

 

中古ピアノが商品になるまでvol.1

中古ピアノが商品になるまでvol.2

中古ピアノが商品になるまでvol.3

 

 

 

 

 

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白鍵の高さの次は黒鍵の間隔を揃え高さも揃えます。

 

 

 

 

 

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アクションのジャックという部品とそれが当たる部分(バットスキン)の位置を合わせるウイペン調整です。

 

 

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アクションの裏のネジを緩めて位置をハンマーの弦合わせ調整と同じように、紙(のり紙)を挟んだりして88個全て調整します。

 

 

 

 

 

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バックチェックという部品が奥の黄色い部品(キャッチャー)ときれいに噛み合うようにワイヤーを曲げて88個全て調整します。

 

 

 

 

 

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その下のキャプスタンボタンの位置を88鍵全て前後左右調整します。

 

 

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このキャプスタンボタンでアクションを持ち上げるのですが、前後させることによってタッチの重さを変更出来ます。手前にやると軽くなり奥にやると重くなるので、好みの重さにすることが出来ます。しかし背の低い機種は、このワイヤーがないのであまり軽くすることが出来ないのが唯一欠点です。

 

 

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キャプスタンボタンの位置を隣同士揃えます。
前後の位置は、写真には載せていませんが鍵盤のウエイトを量りながら許容範囲内で基準をとってやってます。手の感覚だけでは正確に測れない部分もあるので、数値を出すことによって細かい前後の位置の微調整が出来ますし低音部から高音部までのバランスがとれます。

 

 

 

 

 

 

 

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ジャックという部品の高さの調整です。
キャプスタンボタンという部品を回して上下させて上の写真の矢印の間隔を88個全て微調整します。
2度目の音を素早く出すためのこの調整は欠かせません。

 

 

 

 

 

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白鍵の深さ(沈む量)を下に挟んである紙パンチングを出し入れして白鍵全てを10mmに揃えます。
隣同士の鍵盤の深さを統一しないと、音量や弾き心地も揃いません。

 

 

 

 

 

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接近するハンマーと弦の間の距離を測りながら88個全て同じ距離に揃えます(ハンマー接近調整)
広すぎず狭すぎず隣同士の同じ距離に揃えます。これが揃っていないと繊細なピアニッシモが出にくくなり音の輪郭も揃いません。

 

 

 

 

 

 

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黒鍵の深さの調整です。白鍵と同じように鍵盤下に紙パンチングを出し入れして黒鍵全て揃えます。

 

 

 

 

 

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ハンマーが弦を叩いた直後にストップする距離を88個全て揃えます(ハンマーストップ調整)
距離が広いと指にコツコツ感じタッチも重くなり、狭すぎるとフォルテッシモが出せず鍵盤も浅く感じ弾きにくくなります。

 

 

 

 

 

 

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写真が見づらいですが、ジャックという白い部品のストップバーの距離調整です。低音から高音部まで距離を揃えます。

 

 

 

 

 

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赤いチップがついているブライドルテープ。前進したハンマーを後ろに戻し素早く2度目の音を出すためのヒモで、この張り具合を88本1つ1つワイヤーを曲げて調整します。

 

 

 


次はダンパー調整です。

 

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これはペダル内部ですが、よく使う右のダンパーペダルが、部品のサビや汚れで雑音出ることがあるので分解してパーツを磨きます。

 

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ダンパーは弦の振動を止める役割です。
ペダルを踏むとダンパーが弦から離れ、よって音が伸びっぱなしになります。
ペダルを離すとダンパーが弦に触れ音が止まる、このような構造になっています。


一見単純なように見えるダンパーですが、実はこのダンパーは1つ1つ上がるタイミングを調整しないといけないのです。

調整する前のダンパーの動きを動画でご覧ください。
ゆっくりペダルを踏むとダンパーがバラバラに上がるのが分かると思います。
ダンパー総上げ調整前(動画10秒)

 

ダンパーがバラバラに上がるということは、
ハーフペダルで音が伸びる所と伸びずに音が切れる所がでるだけでなく、
音を止める時にも支障が出ます。

 

 

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写真では分かりづらいですが、ゆっくりペダルを踏み込み、
1つ1つ上がるタイミングを隣のダンパーを見ながらワイヤーを曲げて調整します。
伝言ゲームのように次に次にと隣に伝えていき、最終的には全てのダンパーが板一枚のように同時に上がるように調整することで、音を同時に伸ばし同時に止めることができるのです。


調整後はこんな感じです。
ダンパー総上げ調整後(動画)

 

 

 

 

 

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次はダンパーのかかり調整です。


ダンパーのかかりとは、鍵盤を10mm押し下げるまでにどの位置でダンパーを始動させるか、
例えば鍵盤を2mm下げたところでダンパーが動き始めるのか5mm下げたところなのか、
これを隣同士同じタイミングで始動(かかる)ように調整します。
早くかかるほどダンパーの重みが加わるので重く感じます。遅くかかると軽く感じますが遅過ぎるとダンパーが弦からしっかり離れなく音が伸びっぱなしにならなくなるので、適正なタイミングで全て揃えます。

 

 

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このような工具でアクションの裏にあるスプーンに引っかけてタイミングを調整します。

作業風景です→ダンパーかかり調整動画

 

 

 

 

 


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左のペダルの突き上げ棒の調整です。

矢印の先の棒に隙間(遊び)があるので調整します。

 

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左のペダルは、グランドピアノとアップライトピアノの違いという記事を後日書きますのでそちらで詳しくご紹介します。

 

調整はまだまだ続きます。

1台1台丁寧な調整を心がけています

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