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脱“スペック偏重”思考のすすめ 無垢材VS合板VS木質ボード 

みんなのピアノ選びから抜粋

~ピアノのケース素材を比較~

ピアノの鍵盤蓋、屋根、パネルといった外装の木材について。
木材にこだわりある人からすれば、無垢材の方が良いと思うでしょうが、もし木材を乾燥させる工程に不備があったり、納品後のユーザーの管理状態が悪ければ、将来的に木材の収縮から割れ、反り等の支障をきたす恐れがあります。

スタインウェイの塗装の下はこんな感じです。


一方、合板は、薄くスライスした板を木目方向が互い違いになるように重ね貼りした木材。無垢材にみられるような変形はありません。
ご覧の通り、スタインウェイGPの屋根ともなると、選び抜いた木材を貼り合わせています。安物の合板とは音の響きが違うのでしょうか。

鍵盤・アクションを載せる「棚板」が木質ボード。ちなみにヨーロッパ製のアップライトピアノです。


また最近は木質ボード(MDF材)と呼ばれる木屑を接着剤で固めた板材を使用するピアノが増えています。均質で加工しやすく、コストも安いので生産側にとって好都合です。ただ、長い目で見たときの耐久性はどうなのか、10年20年後の状態が気になるところです。

こちらは日本メーカーによる廉価ピアノの棚板。下から覗くと一目瞭然。触感でも分かります。


木材の特徴を知ることは、ピアノを選ぶ良き判断材料になります。
しかし、気をつけるべきは素材選びだけが全てではないということ。

実際に聴こえる音はどうか、長期的に見た場合どうだろうか、金額に見合う買い物と思えるか、自分の好みや条件と照らし合わせながら、あまり近視眼的にならず俯瞰的にアプローチしてみましょう。

(…店員が無垢材をやたら推すけどシーズニングは大丈夫?)
(…合板だから、どちらかというと工業的に作られているピアノだな)
(…値段が安いのはMDF材を多用しているからか…)

そう冷静に分析していけば、ご自身の結論にも納得がいくのでは。
大切なのは、どの素材が優れているか云々よりも、各素材の特徴を知っておくこと。そうすれば無知による後悔を回避できますよね。
値段がどうして高いのかor安いのか、価値をきちんと理解して選んだピアノならば、あなたにとって満足度の高い買い物となるはずです。

 
 

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


脱“スペック偏重”思考のすすめ 木製VSプラスチック製     

みんなのピアノ選びから抜粋

~アクションパーツを比較~

よく話題になるのがピアノ内部のアクションに使用されるプラスチック素材の是非について。以前は木材を加工して作られていた部品が、均一に生産できるプラスチック製に代替される時代になりました。
これも一般ユーザーにとって気になる相違点ではないでしょうか。

カワイSKシリーズのグランドピアノ・アクション模型。黒い部品はカーボン入りABS樹脂製。


「湿気の影響ですぐにタッチが重くなって音が出なくなりますよ」とは木製部品を使用しているピアノを扱う営業マンが、プラスチック部品を採用しているピアノを否定するときのセールストークです。

問題箇所を拡大。回転軸を包む赤いクロスが湿気で膨らむと円滑な動きの妨げに…。


こうしたアクション・鍵盤の動作不良をスティックと言うのですが、実は木製であっても多湿な環境ならば普通に起こり得ます。シーズニングが手抜きの木材であれば尚更です。同じ条件のもと、複数のピアノで実験でもしない限り、その優劣については何とも言い難いですね。

スタインウェイのグランドピアノ・アクション模型。“違い”を観察してみて下さい。


このスティック、ピアノを置いている部屋の湿度管理を徹底すれば、ある程度予防できますし、もし発生したとしても比較的やさしい修理で済む問題です。もちろん不具合の数が多いと面倒なのですが…。

ですから、私はプラスチック素材を特別に酷評も推奨もしません。
木を見て森を見ずとならないように、材質のみならず設計や調整等を含めたトータルでの弾き心地をご判断頂けたらと思います。

※素材に関係なく新品のピアノでもスティックはよくある症状です。
しばらく動きが馴染むまでは辛抱強く調律師に直して貰いましょう。
 

みんなのピアノ選び

お薦めブランド ペトロフ

お薦めブランド ディアパソン

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


脱“スペック偏重”思考のすすめ ~アクションレールを比較~

みんなのピアノ選びから抜粋
 
木製VS金属製  アクションレールを比較

アクションレールは内部のアクション機構の“背骨”ともいえる存在。
各部品が取り付けられる土台となるため僅かな変化でも音やタッチに関わってきます。従って経年変化しない造りが特に求められる箇所。ここではアップライトピアノのレールの材質を取り上げます。

まずは、ひと昔前まで主流だった木製アクションレールです。
長い年月を経てもレールが反ったり、ねじれたりしないようメーカーは充分な乾燥処理を施さなければならず、ユーザーとしても納品した後適切な温度湿度の管理が問われるデリケートな造りになります。

昔のアクションレールは木製でした。

次は、もはや定番化しているアルミ(金属)製アクションレール
工業力のあるメーカーにとって均質に効率的に生産できる上、木材と違って温度湿度の変化に強いことがメリットとして挙げられます。

今のアクションレールはアルミ製が普通。

調律師からすると、狂いのない金属製レールはありがたいのですが、錆付いたネジがレール内部で折れたときや、ネジ穴が緩くなって修理が必要なときには、加工作業の容易な木製の方が助けられることも。

最後は参考までに最近のスタインウェイK型のレールをご覧下さい。
バームクーヘンのように薄い板を積層にした素材を用いています。
さらにはレールの下部にも金属製のレールをあてがっていますので、木製、金属製の長所を合わせたハイブリッドな造りと言えます。

スタインウェイK型のレンナー社製レール。

レール下部にある金属板に気付きますか?

材質の違いが音にも影響すると説明する営業マンもいますが、弾き手の立場では好みの音であればどちらでも構わないと思います。
木製にしてもアルミ製にしても、弾きやすく響きの豊かなピアノが気持ち良いことに変わりはないのですから。

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


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