[ ]調整ができる調律師が育っていない裏事情
日本経済新聞のデジタル人材優遇の記事
AIとかコンピューターのプロミングが出来るデジタル人材には初任給を2割アップして年収も勤続数年で高額支給するという内容の記事が日経新聞の1面に大きく掲載されていました。
逆に究極のアナログ人材の一つがピアノの調律師ではないかと筆者はこの記事を読んで思いました。
たとえば宮大工は一人前のカンナがけが出来るまでに10年かかると云われますが調律師も同様です、ピアノの調律はできても手間がかかる肝心の整調(調整)が早く正確にできるようになるには、やはり10年近くの下積み期間が必要のように思います。
しかしながらアナログ人材の代表の調律師は、本来は修業期間でも給与の保証が必要ですから雇う方も相当な負担になります。
ですから浜松にあるヤマハ、カワイの調律学校は期間1年で卒業、年間の授業料も全寮制で400万円ほどと高額ですが、1年で調律だけを覚えてところで卒業して、一人前としてすぐに外回りの有料調律に回っていますので実際の成長(調整)の下積の基礎研修期間はありません。
しかしアナログの技術、特にピアノの調整は研修で身に付くものではなく、調整は何年もの地味な基礎訓練を積み重ねるしか体得できないので極めて効率が悪く、さらにヤマハ、カワイの経営幹部も調整の重要性を理解していないので、てっとり早くお金になる調律を重視して、作業効率の極めて悪い調整ができる調律師が育っていません。
また仮にメーカーに育てる気持ちがあっても、大概の若い人は長い地道な修業期間を嫌がってすぐに辞めていくので、余程、音楽やピアノという楽器が好きで、地味な精密調整も好んでやるような人でないとこれからの調律師には向かないようにも思います。
さらに言えば、仮に充分な修行期間を経てせっかく調律全般(調整・調律・整音)の技術を身につけても、肝心のピアノユーザーさん自体も、その技術力に十分な価値を見出さないので低評価となり、他の一般の仕事に較べても低賃金労働になります。
さらに他の技術職、例えば歯科でも予約制で、患者さんが自ら決められた時間に訪ねてきてくれるので交通費がかからず効率良く連続して仕事ができますが、調律師の場合は自ら一軒一軒お客様宅にお邪魔する必要があるので、支払う側からすると高額の2時間で2万円の調律代を支払っても、調律師の立場からすると往復の交通費と移動にかかる時間を考えると決して時給1万円とはいきません。
しかしながらアナログピアノは、いかに高級ピアノでも優秀な調律師の技術と情熱がないと本来の性能を発揮しないということを、ヤマハ、カワイさらに高級ピアノのスタインウェイさえも経営者が良く理解してないのが問題です。
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