[ ]メンテナンスはメーカー系列か、ある種の資格を持った調律師に依頼すべきか?
いかなるメーカーのピアノも作業内容は同じです。
ピアノの基本的なメカニズムは、スタインウェイやヨーロッパ製ピアノ、あるいはヤマハ、カワイ、中国製ピアノ、コンサートホールのピアノどれも皆同じです。
ですから調律や整調、整音の手法は、いかなるメーカーのピアノであれ基本的な作業はほぼ同じ作業内容になりますので、料理のように当たり前のこのことが当たり前のようにできる調律師であればOKなのです。
しかし、写真のように鍵盤の下を清掃したり、ピンを磨き、ピンの位置を正しく修正するいうような基本的な作業、当たり前の作業がきちんと出来る調律師が極めて少ないのが残念なところです。
根底にはユーザーの整調や整音に対する理解不足もあり、日頃は調律(音の高さを合わせる)だけの仕事が圧倒的に多く、整調(鍵盤・アクション・ダンパー調整)や整音(弦を叩くハンマーフェルトの弾力調整)といった作業を腰をやる機会がないので、残念ながら整調と整音が的確にやれる調律師は極めて少数です。
また今では大手のヤマハ、カワイも大半が委託調律師(歩合給)になっていますので、その歩合の率(調律師の取り分)を決める方便としても、調律師協会のグレードや各メーカーが設けた各種認定制度があります。
しかし、これらは調律師自身の勉強や励みにはなることはあっても、必ずしも高い技術力を証明するものではありません。
たとえばカワイの高級機種のシゲル・カワイは、カワイの調律師でもカワイMPA(Master Piano Artisan)の資格を持った少数の調律師しかメンテナンスを認めておらず、メンテナンス料金も高めに設定しています。
これは資格がない調律師がメンテナンスを行なうとシゲル・カワイが壊れるという意味ではなく、特にグランドの整調、調律、整音が正確に出来ない調律師が大半なので、せっかくの自社の高級ピアノが本来の性能を発揮しないという意味で、あえて規制しているのだと思います。
当然ながら整調・調律・整音でも、より高度な匠の技術はセミナーで体得できるという類のものではなく、日頃の仕事のなかで、いつも高い意識レベルを持ってコツコツと仕事を積み重ねで初めて体得できるものだと思います。
ピアノの調律とメンテナンス