[ ]ピアノのタッチが変? 簡単セルフチェック
鍵盤の重さ(ウェイト)チェック
ユーザーの皆様は鍵盤が沈むときの重さ(ダウンウェイト)が何gに設定されているかご存知でしょうか?
たとえばスタインウェイDモデルは47g~52gで各鍵盤が沈むように工場で調整されています。ベーゼンドルファー・インペリアルモデルは52g~55gが基準のようです。メーカーや機種によって多少差がありますが、現在の傾向からすると50gあたりが目安と言えそうです。
調律師は鍵盤ウェイトを計測する際に分銅を用いますが、一般のご家庭でも手軽に検査できる代用品は何かないだろうか・・・。
あれこれ悩んだ末に思い浮かんだのが10円硬貨です。お馴染みの10円玉、実は1枚あたり4.5gで製造されているって知ってました?今回このコインを利用したチェック方法をご紹介します!
テープで10円硬貨を10枚重ねたおもりに1枚加えたもの(49.5g)。黒鍵には同様に4枚重ねたおもり(18g)。右は50gに設定した分銅。おもりを置く位置の参考にして下さい。
ここで50gを基準と考えるならば、10円玉を鍵盤の上に10枚(45g)積んで沈むようなら軽めのタッチ、12枚(54g)で微動だにしなければ重めのタッチと判断を下せます。もちろん11枚(49.5g)で沈み始めたらノーマルに近い状態になります。これならば鍵盤が軽いのか、はたまた重いのか、誰でも容易に確認できますよね?
調べるときの注意点は、第一に右ペダルを踏むこと。
ダンパー掛かりの負荷を鍵盤から取り除く必要があります。
硬貨を置く位置も大切です。白鍵は先端より1センチほど内に、黒鍵は先端に、各鍵盤を同じポジションで計って下さい。おもりを置いて、そろ~と沈み始めるタイミングがその鍵盤のダウンウェイトです。
またもうひとつ忘れてならないのがアップウェイト(鍵盤の戻り)。
鍵盤が20gのおもりを乗せても底から戻らない状態では、いくらダウンウェイトが良好でもトリルや連打が弾きづらいタッチになります。
鍵盤に10円硬貨4枚(18g)を乗せて、押し下げた位置から鍵盤が上がってくるか確かめましょう。このときも右ペダルを踏んで下さいね。
温度湿度の影響でタッチも刻々と変化します。個々の鍵盤ウェイトに多少の差があることは目をつぶって下さい。
全体的にタッチが軽すぎる、重すぎる、もしくはウェイトのバラツキが余りに極端である場合は、調律師に相談して修正してもらいましょう。
異常な弾き心地に下手に慣れてしまうと、正常なタッチのピアノを演奏するのに順応が難しくなる恐れがあります・・・。
普段使っているピアノのタッチは軽いのか、重いのか、普通なのか。ピアノユーザーは知っておいて決して損はないと思います。
120円とやる気さえあれば簡単なセルフチェックですので、弾き心地に問題を感じる方は一度このコイン・テストを試してみて下さい!
技術的補足
高さが120cmを超える大概のアップライトピアノはキャプスタンとワイヤーによって鍵盤ウェイトを変更できる仕組みになっています。
アップライトピアノ内部。鍵盤の奥には円筒状の木製部品(キャプスタン)と金属製ワイヤーが備わっています。これを奥に倒すと重いタッチ、手前に傾けると軽いタッチに変更可能。てこの働きの作用点をどこに置くかがポイントになります
グランドピアノはキャプスタンの位置が固定されているため、鍵盤やアクションを徹底的に調整してもウェイトの問題が解消されないとき、最後の手段として鉛調整の出番となります。
アップライトピアノの場合
「キャプスタンの位置を調整してください」
グランドピアノの場合
「鍵盤の鉛調整をしてください」
ただし!
鍵盤の重さに影響を及ぼす要素は種々様々です。
最初に紹介した“鍵盤の動き”も然り。湿気等でアクションの動きが鈍いためにウェイトが重くなる場合もあります。
今回取り上げた調整方法は効果的な手段ですが、必ずしもそのピアノにとって一番相応しい選択とは限りません。
まずは調律師にピアノの状態を診断してもらいましょう!
グランドピアノの鍵盤鉛を削る作業風景です。アクションや鍵盤をしっかり調整してもウェイトが異常な場合の最終手段。鍵盤に埋め込まれている鉛を1鍵ずつ入れたり抜いたり削ったり…。最初から弾きやすい楽器を選びましょう!
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