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いま求められるメンテナンスの意識

みんなのピアノ選びより抜粋

ピアノにおけるメンテナンスとは何か。
それは調律のみならず全体のコンディションをリセットする作業です。

と言いましても、特別に真新しいことをする訳ではありません。
新品ピアノにおける出荷調整や中古ピアノにおこなうクリーニング等を調律に+αして、毎回ひと手間、ふた手間かけて、ピアノの変化した箇所を元の状態に戻すだけの話ですが、これが重要なのです!

気持ちよく演奏するためには、タッチや音色を均一に揃えるメカニックの調整が必要です。

鍵盤と接触するピンの汚れやベトツキを除去。きれいに磨いて鈍いタッチをリセットします。


ピアノの将来を考えるなら、楽器内部の弦や金属製パーツの汚れ・錆の予防・除去作業は欠かせません。

弦&弦を保持するチューニングピンを調律前にクリーニング。長く放置されると作業が大変…


輝き・艶を失ったペダルや外装も、こまめにワックスやコンパウンドで磨いてあげれば新品のような光沢に戻すことが可能です。


このような作業を、そのときの状況や状態に応じて、定期的におこなう調律に加えることで、初めてピアノは性能を発揮してくれるのであり、健康な状態を長い間保つことが出来るのです。

ちなみにコンサートホールのピアノの場合、年1回2日かけて、上記のような作業を徹底して実施(保守点検)しています。

どんなに素晴らしい楽器を入手しても、調律だけでは、音質のムラやタッチの狂い、錆や汚れによる劣化を防ぐことは不可能な訳ですが、こうした事実をユーザーの皆様はどこまでご存知でしょうか。

新品に近い状態、また気持ちの良い音やタッチを維持するためには、調律師、ユーザーの両者がピアノに対してメンテナンスの意識を共有することが必要最低条件と言っても良いでしょう。

一般家庭のケースでは、もちろん費用や時間の面で制限ありますが長期的にピアノを考えるならば、調律師が+αの作業を毎回コツコツと積み重ねてくれることで必ず大きなアドバンテージが得られます。

アクション&鍵盤の調整が全て終了した状態。毎回この“維持”に努めるのが調律師の使命!


従って調律師を選ぶポイントは、一言でいえば、どのようにピアノをケアしてくれるか、調整作業の内容です。
依頼した調律師が音を合わせる以外に、どのような作業をしてくれたのか、ユーザーは毎回きちんと把握しなくてはなりません。

ピアノを末永く楽しく使いたい方は、料金や経歴、資格だけで調律師を判断して安心するのではなくサービス内容を重視すべきであって、それがピアノの将来を見据えた大人の選択ではないでしょうか。

ピアノを購入する際には、こうした調律師の役割も念頭に置いて、ひたすら値引きして“商品”を売りたいだけの店なのか

それとも
あなたの“楽器”をずっと大切にケアしてくれる店なのか
各店のアフターケアへの意識と取り組みにも注目しましょう!

☆POINT
「販売側は契約がゴールですが、あなたにとってはスタート。
安心してメンテナンスを託せる調律師(店)を選びましょう。」

~もっと弾きやすいピアノにして欲しい~
~10年後も使用できるピアノにして欲しい~
~調律ついでに何か1曲弾いて欲しい~

これらは実際にお客様から頂戴した様々なリクエストです。
ユーザーは調律師に対して何を望んでいるのだろうか
想像力を働かせて仕事に臨むことの大切さを考えさせられます。

これからの調律師はただピアノに向き合って作業するのみではなく、ピアノの魅力を相手に伝える努力や顧客の満足度を高めるための創意工夫も求められます。

いくら良い仕事をしても、その価値を理解してくれる人が増えなければ調律師もピアノメーカーも生き残ることは難しい気がします。

みんなのピアノ選び

ピアノの調律とメンテナンス

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


調律とメンテナンスの違い   調律≠メンテナンス

みんなのピアノ選びから抜粋

調律≠メンテナンス

購入後も、そのピアノを長い年月に渡って気持ちよく使用できるかではユーザーにとっては重要な問題ですよね!

もちろん耐久性については、各メーカーによるピアノの構造的な要因(木材の乾燥、金属フレームの鋳造、各部品の品質等)がまず第一に挙げられますが、納品後に定期的にお伺いする調律師のメンテナンスによっては、10年後20年後の楽器の運命が大きく左右されます。

アップライトピアノの調律風景


ここで、皆様にひとつご質問です。
調律メンテナンス(維持管理)、この違いを理解していますか?

調律は狂っている音程を合わせる作業(チューニング)です。
しかし、毎年調律さえすれば、ピアノの状態が安泰かのように錯覚しているお客様のあまりの多さに、正直私は違和感を覚えます。

実際のところ「調律お願いします」と依頼を受けた調律師が実施する一般的な作業を挙げると、音合わせ(調律)、鍵盤・アクションの簡単な動作チェック、それにピアノ内部の掃除といったところでしょうか。
まぁ短期的にみて問題なく音は出るだろう、といった程度の最低限のサービス内容なのですが、今まではこれで良しとされてきました。

グランドピアノの調律風景


ところが、いまやユーザーの意識や傾向は変化しつつあります。
隣の家がピアノを購入したから我が家も、と安価なピアノが爆発的に売れて大量生産された時代は、もはや過去の話となりました。

たとえ価格が高くとも上質なピアノを、孫の代まで大切に使いたい!
そのような愛好家が少しずつ増え始めているのが業界の現状です。

またこれからの時代、そうした本当に音楽が好きなお客様しかピアノ(とりわけ高価な欧米製ピアノや新品のグランドピアノ等は)を購入して頂けないのではないか、とも接客の現場で感じています。

こうしたユーザーの本物志向への変化を考えると、従来の調律サービスの内容では、対応が不充分であると言わざるを得ません。
そこで求められるのがメンテナンスの発想です。

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


ピアノメーカーの現状から考えるピアノ選び

みんなのピアノ選びから抜粋

新品と年代物を比較するとき、よく話題に挙がるのが、木材の質。 資源に恵まれていた昔の楽器の方が響きが良い、とヴィンテージのピアノを愛好する人達も沢山いらっしゃいます。  

確かに以前に比べ、ピアノに適した木々は大量伐採によって絶対量が減少し、響鳴板などに使われる希少な木材の確保にはどのメーカーも苦労しているようです。

「高級な響板はルーマニア産のスプルース材」と私が教わったのも今は昔。現在はアラスカなど別の産地のものが主流になってます。
木材の原産地の変更は、ピアノの音色や響きに少なからず影響を与えていることでしょう。これについては異論ありません。

ただ、それに加えて忘れてならないのが木材の経年変化です。
古いピアノ特有の味わいある音響は、産地というよりも時の経過作っている部分もあり、それを新しいピアノと比較してしまうのはアンフェアというものです。もしかすると新品のピアノも、将来的に同じような響きを奏でる可能性がないとは言えませんからね。

正直、木材や産地の違いのみで、新旧ピアノの良し悪しを論ずるのは難しく、これは好み、個性の範疇とも考えられます。

むしろ、注目すべきは昨今のピアノの生産システム
ミケランジェリは「手工業的に作られるべき」と語っていますが、これは全てハンドメイドで行うという意味合いではありません。

アクションや鍵盤など、均質な精度が求められる部品の加工や成型については、工作機械を用いた方が効率的かつ正確。
工業化は必ずしも悪ではなく、手作業によるムラやバラツキ等を解消してくれるという大きなメリットがあるのです。

ハンブルク製スタインウェイのアクション。名門レンナー社製パーツが搭載されています。
 

かたや、大工仕事のように木材同士を組み合わせるボディはじめ、音とタッチに密接に関わる工程には高度な職人技が不可欠です。

ピアノが人の感性に響く楽器である以上、最後の詰めは人の手で時間をかけて音や響きを意識して作り上げるべきなのですが・・・
ここで機械生産と職人仕事のバランスが問題として浮上します。 

某メーカーの例を挙げますと、もともとは木材を丁寧に削り出して寸分の隙間なく組んでいた作業を、 今は生産時間の短縮のため、LEGOブロックのような簡易なハメ込み式にしてしまっています。

少し緩めに木材を加工しておけば、組み立てが楽になりますから、生産性はもちろん向上しますが、楽器の響きはどうなるでしょう。

弦を叩いて音を鳴らすハンマーフェルトの整音作業も然りです。
強音から弱音まで表現できるように、昔は専門の職人がフェルトに丹念に針を刺して音を聴きながら仕上げていた工程を、今では作業の大部分を機械に任せてしまっているメーカーがあります。

安価なピアノに至っては、そうした大切な調整が行われないまま、聴くに堪えないキンキンと金属的な音で出荷されている場合も・・・。

こうした各工程における簡略化が、1台1台に小さな誤差を生み、その違いが積み重なって、完成時の音、響きの“クオリティの差”、ピアノの個体差に繋がっていると想像するのは難くありません。

建築物で例えるなら、設計図面や素材が素晴らしかったとしても、大工さんの腕が優秀であったとしても、工期に間に合わせるために作業を急かされれば、不出来な結果に終わることもあり得ますよね。

工業の発展によって手仕事による問題点は改善されたものの、職人技術が求められる分野にまで効率性を持ち込んだことで、楽器の完成度に差が生まれてしまうのは、なんとも皮肉です。

これら全ての原因は量産による時間の制約にあると言えます。

本来であれば、ヴァイオリン職人のようにじっくり制作時間を費し、理想の響きを実現するのが、楽器作りのあるべき姿と考えますが、企業ともなると利益の追求、コストの抑制に迫られるのが現実。 

現在のピアノ造りは、商業的な理由によって時間と台数に追われ、楽器として望ましいレベルを保つのが困難な状況に直面しています。
良い悪いという次元ではなく、これも時代の流れなのでしょうか。

メーカーの事情をふまえて、製品の個体差をやむなしとするならばピアノ購入者は、何を基準に、どのように入手すれば失敗しないか、おのずとイメージが湧いてくるのではないかと思います 。

イタリアのブランドFAZIOLIの支柱を裏側から撮影。新興メーカーながら伝統に回帰した見事な造り。真価は隠れた部分に宿るものです。


最後の仕上げは人の手と耳が頼り。一音ずつ聴いて硬い音のハンマーフェルトに針を入れてバランスを整えます。機械生産だけではユーザーの琴線に触れる“楽器”は完成しません。
 


みんなのピアノ選び


お薦めブランド ファツィオリ

お薦めブランド ペトロフ

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


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