[ ]一生の友となるピアノとは?
最近は買い替えのためのピアノを探しておられる方が多く、主旨としては一生もののピアノを探している、或いは一生の友となるピアノが欲しいということです。
たとえばスタインウェイBモデル(2300万円)を購入すれば一生もののピアノと考えられる方が多いのではと思いますが、必ずしもそうはならないのがピアノ選びの難しいところです。それは美男美女が相思相愛で結婚しても必ずしも一生幸せに添い遂げることが難しいのと似ています。
どんな名器と云われるピアノを購入しても必ず気になるところがあり、そのままにしておくと演奏するたびに意識がそこに行き最終的に嫌で嫌で困るようになります。
ただ人の性格は変えることができませんが、ピアノの場合は調律師の技術と情熱次第で演奏者にとって嫌なところを変えるというか気にならないレベルに変えることができます。
ピアノという楽器はイージーオーダーという考え方
よくよく考えてみるとピアノは他の楽器と違い、鍵盤から複雑な構造のアクションを通じて弦を叩く、いわばリモートコントロールで演奏する特殊な楽器です。
それ故に鍵盤から打弦するまでの複雑なメカニズムを調整することで演奏者の好みのピアノに近づけることが可能という意味で、ピアノはイージーオーダーの楽器と云うことができます。
たとえばニューヨークスタインウェイのチーフテクニシャンでホロビッツの専属調律師(故)フランツ・モア氏も、スタインウェイをホロヴィッツの希望に合わせた音色やタッチに仕上げるのに相当苦労されたと著書で述懐しています
フランツ・モア著/イーディス・シェイファー構成/中村菊子訳
『ピアノの巨匠たちとともに』(音楽之友社)より
音楽ホールには最高級のフルコンサートピアノが設置されていますが、演奏者にとっては必ずしも満足な性能を発揮していないようで、そのためにギャラが高い一流のピアニストは、全国ツアーでわざわざ専属調律師を同伴して、ホールのピアノを自分好みのピアノに仕上げてから演奏します。
逆からみれば、たとえ普通のピアノであっても調律師の腕と熱意で時間をかけて演奏者好みに調整を行い、仕上げの音色も好みの音色に近づければ、演奏者にとってはもう手離せないほど魅力的なピアノに仕上げることもできると云えます。
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