[ ]ピアノという楽器はイージーオーダーという考え方があります№2
ピアノを考える際にご理解頂きたいことは、最高級ピアノを含めほとんどのピアノが圧倒的な調整不足だということです。
鍵盤、アクション、ダンパーと云った動的なメカニズムの部分にも、主に木やフェルトといった自然素材を多用しているので、必ず個々の部材の伸縮や歪みが出てきます。
この動的なメカニズム全体を、一定の方向性とバランスを保ちながらの、人の手で一つひとつ歪みや伸縮を修正しながら最適に作動するように擦り合せ調整をする必要があります。
弊社の納品前の出荷調整の風景
最適な擦り合せ調整の結果として、はじめて本来の音色や響きはもちろん、各鍵盤のタッチ(重さや深さ)や音色の粒も均一になり、正確な連打やトリルができ、ピアニッシモも気持ち良く正確に出すことが出来るピアノになります。
さらには納入後のメンテナンスで、それらの具合(タッチや音色、響き)を演奏者好みのピアノに仕上げていく必要があります、その意味でピアノという楽器は、既製品ではありますがセミオーダー品とも云えます。
最終的に音色も演奏者の好みに音色の粒を揃えていきます(整音作業)
しかし現状ではスタインウェイのような高額ピアノでも、出荷調整(納品前に販売店、又はメーカーが行う調整)はコストダウンで現状ではほとんど行われず、納入後のメンテナンスも大半が調律だけで済まされています。
ところで納品前に行う出荷調整は、手慣れた技術者でも一通りやるには新品で3日(中古品はその倍以上)かかりますが、効率重視の現代では、メーカーが行う出荷調整は高額なスタインウェイでも最近は5時間に制限されているようですので、他は推して知るべしと云ったところです。
性能のことを大切に考えると、調整不足分は販売店側で納品前に十分な出荷調整(約3日、24時間をかける)を行う必要があるのですが、販売店にはそのような習慣はほとんどなく、故に、精密調整ができる技術者もほとんどいません。
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