[ ]外国製ハンマーVS国産ハンマー ハンマー比較論
弦を直接叩いて音を鳴らすハンマーは音質に関わる大切な部品。
ウッドに巻かれたフェルトの硬さによって、音やタッチの質感までもが変わるのですが、一般ユーザーにはあまり知られていません。
カンカンと派手な音、モコモコした円やかな音、こうした音質の違いは実はハンマーフェルトが“硬い”か“柔らかいか”によるものなのです。
ヨーロッパ製の代表格は独レンナー社。スタインウェイをはじめ一流ピアノメーカーが採用している老舗ブランドです。他にはアベル(独)、ロイヤルジョージ(英)も有名ですね。一方、ヤマハ、カワイなど工業力があるメーカーはハンマーも自社生産する傾向にあります。
左から スタインウェイ ヤマハ カワイ
左から レンナー アベル ロイヤルジョージ
88個全てのフェルトに対して針刺し、ファイリング(整形作業)を実施。まずは発音の土台作り。
普段は人目に触れないアクション&ハンマー。丹精込めた整音がピアノに魂を注入します。
メーカーカタログや楽器店のHPには“○○製ハンマー使用”と謳っているものが多く、それをひとつ目安にされるお客様もいます。
ここで申し上げたいのは、ハンマーのブランドが“楽器の評価”に直結する訳ではないということ。どんなハンマーであっても技術者の手による整音というハンマーの硬さを調整する作業が加わるからです。
右の画像は某ドイツ製ピアノのハンマーを整音しているシーンです。
新しいフェルトは硬く圧縮されているため、このままではまるで金づちで叩いたような音とタッチ。とても演奏できる状態ではありません。
そこで、先端に針の付いたピッカーという工具を使ってフェルト部分をグサグサ刺して、ハンマーに弾力性あるクッションをもたせます。
そうするとフェルトの繊維が膨れ上がって形が崩れてくるので、この後ペーパーやすり等でシンメトリーに削ってやっと第一段階が終了。
ここから全ての音質がきれいに揃うまで、技術者はフェルトに対して、針を刺し加えたり、やすりで削ったり、液体の硬化剤で固めたり、1音1音を確認しながら微妙な調整を繰り返すことになります。
強烈なfffから繊細なpppまで表現可能なハンマーが完成するには、こうした気の遠くなる手間がかけられる事実を知っておきましょう。
有名なハンマーを使うだけではピアノは“楽器”にならないのです。
ですから、もし音楽的にピアノを考えるならば、ハンマーが外国製か日本製であるかよりも、手作業で行われる整音がもつ意味合いの方が遥かに重要です。整音なくしてハンマーを語ることは出来ません。
はたして音の強弱がコントロールしやすい状態に仕上がっているか、
ブランドではなく音やタッチからハンマーの感触を確かめましょう!