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ピアノという楽器の不完全性

みんなのピアノ選びから抜粋

ピアノという楽器の不完全性

某楽器店で高級ピアノを新品購入されたお客様のエピソードをひとつご紹介します。

その方はショールームのピアノを試弾した際に、幾つかの音に混じる金属的な響きが気になって質問したところ、「調整したら直りますから」と販売スタッフに言われてそのピアノの購入を決めたそうです。

ところが納品後に調律師がいくら手を入れても一向に直らず・・・。
しまいには返品するしないのクレームにまで発展したそうです。

そのピアノや調律師の仕事内容に関しては実際に確認していないのでコメントを控えます。

私が一番に問題と感じたのは、販売スタッフが安易に調整で直る、と説明した点です。何とかして売りたい気持ちは分かりますが、余りにお粗末でプロ意識に欠ける対応に思います。

正直なところ音の凸凹を整える調律師の立場からすると、調律・調整で音質のバラツキを全て解消することが困難な場合も存在します。

よりダイナミックな音量、音響を求めて現代のピアノはフレームや弦等に金属素材を多用するようになりました。それゆえ音を鳴らしたときに時折その接点で金属的な響きが発生するケースがあります。

調律師は異質感が目立たないように技術を駆使(整音作業)して対処するのですが、ピアノの出来によってはそれにも限界が・・・。

ユーザーの皆様にはぜひピアノという楽器の繊細さと構造的な特性をご理解頂けると助かります。

音に敏感であると自負される方、じっくり一音ずつ吟味して調律師と相談しながらピアノを選んでみては??

みんなのピアノ選び

ピアノの調律とメンテナンス

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


ピアノの音質チェック 実践編

みんなのピアノ選びから抜粋

購入前に全ての音を聴いてみること

思い描く通りに気持ちよく演奏できるピアノの条件を考えるならば、
各音の質感が不自然なく揃っていること、あるいは隣り合った音の粒立ちが連なっていること
大前提と言ってもよいでしょう。

 
では実際にショールームでピアノの音の均一性・均質性をテストする方法をご紹介します。

ピアノを弾ける方はムラのないレガートで半音階を弾きながら、全ての音に注意を払って聴いてみましょう。
(ちなみにこれはブレンデルが上記の著書で推奨している方法です)
このときピアノメゾフォルテぐらいの音量がオススメなのですが、まずは各音を弾く指の強さが均一であるように心がけて下さい。



自分は弾けないからなぁ…、という方には別の手段もあります。
弾く指を1本に決めて、力を入れ過ぎず、適度な音量で鍵盤を押しましょう
そして左端の低音からひとつずつ順番に右隣の鍵盤を鳴らしながら、右端の高音まで聴いてみます。「カエルの歌」のように、ときには反復して音を比較してみるのも非常に効果的ですよ。



ひとつひとつの鍵盤を一定の強さで叩くことならば、コツさえ覚えればどなたでも出来るはずです。滑らかに連なる半音階を弾くことはプロの演奏に近い領域になりますので、むしろ同一の指でポンポンと音を鳴らすチェックの方がすぐに馴染めるかもしれません。

※グランドピアノの場合、ソフト(左)ペダルを使用した状態の音質も同じ要領でチェックしましょう。

みんなのピアノ選び

ピアノの調律とメンテナンス

Chromatic scale

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


個体差による落とし穴 CASE STUDY

みんなのピアノ選びより抜粋

個体差による落とし穴

とあるピアノの先生よりご依頼を頂いて、ご実家のピアノを10年振りにメンテナンスしたときのことです。

「このピアノと同じモデルを知人宅で聴いて気に入ってね。
店のショールームでも確認して購入を決心したけれど工場から届けられた新品は音がこもっている感じで・・・。調律師さんに調整して貰ったけどやっぱり好きにはなれなくって。それ以来あまり使っていないのよね」

そのピアノは落ち着いた音色で決して悪い楽器ではなかったのですが、迫力のある響きを楽しみにしていた先生の満足を得ることはなく、結果あまり愛着を持つことができなかった、というお話でした。

羊毛を圧縮して作られるハンマーフェルトはピアノの性格を決める重要なポイント。フェルトの硬さ、形状、密度、質量は1台ずつ微妙に異なるため音質やタッチ感にも違いが生じます。
(画像はグランドピアノのハンマー)


聞けば購入時に販売スタッフからは「展示品とほぼ同じようなピアノが工場から出荷されます」と説明を受けたとのこと。

お客様のイメージに合った(あるいはイメージ以上の)ピアノであれば良いのですが、期待はずれ、というより音楽的な個性が好みと異なるピアノが届いてしまう場合があるので購入する側も注意が必要です。
言うなれば、ピアノは一点物に近い特性をもつ工芸品なのです。

もちろん納品後に調律師がユーザーの希望する音やタッチに近づけることも可能ですが、内容によっては多くの作業時間を要します。

最後の仕上げ、整音中のハンマー


やはりお客様ご自身が気に入ったピアノをそのまま購入される方が間違いないでしょう。もし店頭に展示しているピアノを好まれたなら現品購入も視野に入れてみては??

みんなのピアノ選び

ピアノの調律とメンテナンス

 

株式会社浜松ピアノ 代表取締役社長

植田 信五


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